来世なんていらない
ふわっと、真翔が私を抱き締めた。

やわらかい、ゆるい抱き締め方。
真翔の香りが今までで一番近くなった。

「ま…こと…?」

「まつりは悪くない」

「私、悪くないの…?」

「悪いわけないだろ。まつりは一人の人間なんだよ。こんなこと間違ってる」

真翔が私の体から離れた。
真剣な顔から目が離せない。

「俺に力があれば守ってあげられるのに。ごめん」

私は首を横に振る。

「まつり。もっと、助けてって言っていいんだよ。俺を思い出して」

「真翔を、思い出す?」

「うん。俺が居るってこと忘れないで。俺はまつりの味方だ」

嬉しくて、泣いてしまいそうだった。
喉にグッて力を入れて、我慢した。
でも嬉しさが込み上げてきて、苦しい。

「私、ずっと地獄だった」

「うん」

「心にずっと地獄があった。誰にも見てもらえない地獄。何処にも存在出来ない地獄。声も届かない。愛も無い。一生このままなんだって、生きてる意味なんて無いって思ってた」

「うん…」

「真翔…。真翔を信じてもいいの?私、このままここに居るなんてやだよ。地獄はもう嫌だ!真翔…お願い…私を助けて…!」

真翔がギュッて私を抱き締める。
さっきよりも、もっともっと強い力で。

「くるし…よ…」

「ごめん」

ごめんって言ったけど、真翔は私を離さなかった。

「まつり」

「ん」

「今の、まつりの一番の願いは何?」

「私、」

「うん」

「友達が欲しい」
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