来世なんていらない
翌日の登校は、いつもより足が軽かった。

真翔と一緒なら、私は私の世界を変えられる。
本気でそう思えた。

校門をくぐって、運動場を突っ切って、校舎に入る。
二年生の下駄箱、自分のクラスの所まで行ったら、進藤さんが上靴に履き替えているところだった。

進藤さん。
私のレジャーシートを受け取ってくれた人。

「おっ…おはよう!」

自分からクラスメイトに挨拶をするのは四月ぶりで、心臓がすごく早く脈を打った。

履き替えようとしていた上靴を持ったまま、振り返った進藤さんは、私を見て一瞬驚いたけれど、おはようって言ってくれて、
「ちょっと待って」って言いながら、上靴を履いた。

「ちょうど良かった。これ」

進藤さんは鞄から袋を取り出して、私に差し出した。

袋の中身が分からないまま受け取って、中を見た。

「これ…」

「九条さんのレジャーシート。片付ける時居なかったから。預かってたの」

「ごっ…ごめんね!片付け、手伝えなくて。ありがとう、捨ててくれても良かったのに、ありがとう」

きょとん、とした進藤さんが、クスッて笑った。

「九条さんってけっこういっぱい喋るんだね。それに捨てちゃだめでしょ。来年困るじゃん」

進藤さんはそれだけ言って、先に行ってしまった。

来年?
三年生の遠足?
私、誰かとお弁当食べるのかな。

笑った。
進藤さんが。

私に笑ってくれた!
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