別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
 ただでさえ彼に翻弄されているのにと、焦りと羞恥で頬を染めながら恐る恐る和輝の表情をうかがうと、熱のこもった視線とぶつかる。

「そのかわいい顔はわざとか?」

「え?」

 一瞬彼が何を言っているのかわからず聞き返す。

「そうだった。君のそれはわざとじゃないからたちが悪いんだ」

 口の端を上げた和輝は困惑する未来に構わず、体を起こし覆いかぶさりながら吐息を重ねてきた。

「ん……っ」

 最初は慣らすような丁寧なキスが徐々に角度を変え、深いものへと変わっていく。
 情熱を流し込むようなキスを受け止めるとすぐに未来の身体から力が抜けていく。

(ダメ……今日も今日とて流されてしまう……どこが『自分をしっかりもっていこう』よ)

 出ていくつもりなら、こういう行為はしない方がいいに決まっている。

 でも、ずっと好きだった人に甘く求められて拒否できるほど未来は屈強な精神の持ち主では無い。

 自分のずるさと弱さを心の中で罵りつつ、彼の手がパジャマのボタンにかかっても未来は抵抗することはなかった。

「未来……君は俺にただこうされていればいい」

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