別れを決めたので、最後に愛をください~60日間のかりそめ婚で御曹司の独占欲が溢れ出す~
それは、どのくらい上からなのでしょうか? と未来は続けようとしたが止めた。
 その『上』に数名心当たりがあるのだが、末端人事に関与するには上すぎる。

 そもそもINOSEはやりたい仕事や部署について、スキルが伴わなくても発展的な事であれば本人の希望を出来る限り実現させてくれる。
 それは経営者の『仕事はスキルでやるものではない。挑戦する心があればスキルは後からついてくる』という素晴らしい理念が浸透しているからだ。
 だからこそ未来は国内営業部で事務を一通り覚えた今、スキルアップのため営業の仕事をしていきたいと希望し、認められていたはずだった。そう思うと悔しさはぬぐえない。

(でも、駄々をこねてもしかたないよね。サラリーマンだもん、こんなこともある)
国内営業部としてはいい形になるなら今回は諦め、しばらくは事務に専念しよう。

「わかりました。でも事務の人員増強もお願いしますね」
残念に思いながらも未来は自分を納得させた。

 午後の仕事が一段落し、未来はひとりオフィス内のマグネットスペースに来た。
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