さよならの夜に初めてを捧げたら御曹司の深愛に囚われました
 その中で未来は営業のサポート業務の事務を担当していたのだが、ここ最近、営業に出たいと志願し、先輩に付いてノウハウを覚えていたところだったのだ。

「ごめんね園田さん。急なお知らせになっちゃって」

 ミーティングブースでテーブルの対面に座った課長の佐野が肩を竦め申し訳なさそうな顔をする。
 40代の上司は親しみやすい人柄で話しやすいせいか、未来もつい恨みがましい言い方になってしまう。

「海営から尾形くんがくるのかぁ。確かに彼は優秀な営業ですけどね。でも、事務も増やしてもらえるはずだったじゃないですか」
 オフィス移転が急激に増えている国内事情に合わせ、未来が所属する国内法人営業部に海外営業部の若手の受け入れが決まったという。
 今後も少しずつ即戦力となる営業の人員を増やしていくそうだ。
 逆に事務の人間はこのまま補充される予定が無いらしく、未来は当面現職に留まることになってしまった。

「僕も驚いたんだけど、上から降りて来た話だからどうしようも無くてね。園田さんせっかく営業の勉強してくれてたのにすまないね」
佐野は残念そうに言う。

「上からの人事」
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