さよならの夜に初めてを捧げたら御曹司の深愛に囚われました
 見た目はチャラい雰囲気だが、会えば気さくに挨拶してくれる男の子なので悪気はないだろうし、注意もしずらい。
 
 思い切って引っ越しもありかもしれないと考えた時、実家に戻ろうと思いついたのだ。
 急な退去の申し出だったが、アパート側には受け入れてもらえた。

 実家のマンションは管理会社に委託してメンテナンスはしてもらっているし、ごくたまにだが父が帰って来ることもある。
 母が亡くなってから10年過ぎた。もうあの家でひとりでいられるくらい心の傷は癒えている。

 そしていつか父と一緒に母を偲びながら暮らせたら、母も喜ぶだろう。

 父はずっと名古屋の研究所に勤めている。正直に言うと父に対するわだかまりは未だになくなってはいない。
 でもたったひとりの未来の家族であることは変わりないのだ。

 いつか父が東京に戻ってきたら一緒に暮らしてそのわだかまりをゆっくり解くことが出来ればと思っていた。

 だったらこのタイミングで引っ越しておいてもいいと考えたのだ。

 (和くんの想いを絶ち切る決心も出来たし、ここでいろいろな環境を変えるのもいいかもしれない)

< 50 / 230 >

この作品をシェア

pagetop