ウェディングドレスは深紅に染まる

 王家の結婚儀式は海の断崖で行われる。

 海神(かいじん)を信仰している王家では、真下に海が広がる神聖な断崖で神に結婚の許しを請い、2人だけで祈りを捧げるのがしきたりだった。

「祈りを捧げ、神の前で口づけをし、最後に誓いの言葉を。晴れてエリナ・バーラはレナード王子の妃となります」

 神父が「では……滞りなく」と頭を下げ、護衛の騎士達と少し離れた待機場へと下がっていく。

 レナードとエリナは膝立ちをし、目を閉じた。

 サファイアの瞳に微々たる光を感じたレナードは口元をニンマリ形作る。

 やっと観念したのか。人形を抱いてもつまらんからな。手こずらせやがって。まぁいい、今からお前は僕のものになるのだから。

 エリナをチラリと横目で見てはほくそ笑み、舌なめずりをする。

 女神を穢す時がきた。
 今夜は存分にかわいがってやる。

 祈りを終える時間になり、レナードは立ち上がった。

「エリナ、神の前で口づけを」

 エリナを立たせ、口づけを交わすと、今までは生気もなくされるがままだったエリナがレナードの唇に強く吸い付き、首に腕を回した。

 ふん、かわいいじゃないか。

 レナードがニヤリと笑った瞬間、首筋に切り裂くような激痛が走り、ビュッと真っ赤な血が吹き出す。

 レナードはうめき声を上げ、エリナをドンッと突き放した。

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