ウェディングドレスは深紅に染まる
暖かい季節、陽だまりの中で少女のおねだりをする声が聞こえる。
「おばあちゃん、それで? それで?」
「それでっ……て、それでおしまいだよ」
「そうなの? お姫様は恋人と別れて、明日、王子様と結婚式をあげる事になりました……なんて、続きが気になるわ」
少女はぷぅと頬を膨らませた。
「まぁ、物語だからね。そうだねぇ。もしかしたら、別れた恋人が迎えに来てくれたかもしれないし、王子様と幸せに暮らしたかもしれないねぇ」
「なんで、恋人と別れちゃったんだろう?」
「別れにも色々とあるもんだよ……アリスは、この物語は好きかい?」
「好きっていうか、面白いわ。だって、大好きな恋人と別れて、大嫌いな王子と結婚……なんて普通の物語とは逆だもん」
アリスと呼ばれた少女は無邪気に笑う。
「そうかい」
白髪の老婆は穏やかに微笑んだ。
笑った老婆の目を覗き込んで、アリスは残念そうに口を尖らせる。
「私、おばあちゃんみたいなサファイアの瞳が良かったなぁ」
「アリスの落ち着いたブラウンの瞳は素敵だよ。おばあちゃんは大好きだけどねぇ」
アリスは、んーと少し考え、ニカッと笑う。
「そうね。実はね、そんなに嫌いじゃないの。ブラウンの瞳も髪も!」
白髪の老婆は愛おしそうに笑いかけ、ゆっくりと目を閉じた。
《fin》

