愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました
「嘘だとおっしゃって・・・」

そう消え入りそうな声で呟いたセリアに馬車に同乗していたセリアの侍女は立ち上がった。


「すぐに旦那様に報告しましょう」

「大丈夫です。セリア様は何も悪くありません」


侍女の言葉にセリアはすぐに反応出来なかった。

しかし、セリアは屋敷に着くまえに侍女に口止めを命じた。

何故ならセリアは婚約者であるノア・ヴィアーズを建前ではなく愛していたからである。

いくら王族とはいえ婚約者がいる身で他の令嬢と恋仲であるなど、醜聞どころの話ではない。

「セリア様・・・」

貴族令嬢として人前で涙を流さないよう教育されているセリアは涙一つ流さなかった。

それに加え、侍女に大丈夫と優しく微笑む姿は他の令嬢の憧れのままだった。

しかしセレアの心はかつてない程乱れていた。
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