雪降る夜はあなたに会いたい 【下】


 それから、ホテルのレストランで食事をした後、その上階の部屋に来た。

「――この服、本当によく似合ってる」

私を背中から抱きしめると、耳元で創介さんが囁く。

「そうですか? 創介さんが気に入ってくれたなら、よかった」

鎖骨のあたりで交差された創介さんの腕に手を添えた。

「でも、よく似合ってると思うと同時に脱がせたいと思うのも、男の(さが)だな」
「そ、創介さんっ!」

その手は既に、ワンピースのファスナーに触れている。

「急すぎます――っ」
「どこが? こっちはずっと待ってたんだ。どうやって脱がせよう、どうやって苛めようって、それしか考えてない」
「きゃっ、ちょ……っと、待って」
「待たねーよ」

奪い去られるみたいに腰を引き寄せられ、ベッドに押し倒されていた。
 
軽い抵抗が何の意味もなさいことを知っている。すぐに思考を放棄して、腕を伸ばした。



「本当に、同居しなくてよかったんですか……?」

抱き合った後、ベッドの中で息を整えながら創介さんにそう尋ねた。

「ああ、そのことか」

私を腕に抱き髪を撫でてくれる。

「今は実家に住んでるのに。お父様、家を出るのを反対したんじゃない? 私のことなら――」

私のことを考えて無理を言ったんじゃ――。

そんなことを思って、増々気がかりになる。

「違うよ。この件は、完全に俺の我儘だ。俺が、おまえと二人で暮らしたいんだよ」
「でも、お父様の言うことを聞いた方がいいんじゃ……」
「じゃあ、いいのか?」
「え?」

創介さんの言いたいことが分からずに、腕の中から創介さんを見上げると、すぐさま唇を重ねられた。あまりに突然で目を閉じるのも忘れる。

「――こんなこと、家の中あちこちでされるんだぞ? そんなところあの父親に見られたいか?」
「え……え?」
「雪野と一緒に暮らせるようになったら、おそらく俺は抑えがきかない。所かまわず手を出しそうだからな。あの家で同居なんかしたら、おまえが困るぞ? 雪野は人に見られるのが恥ずかしいだろ?」
「そ、それは――」
「だから、ここは俺の言うことを聞いておくんだな」

相変わらずの強引さ――でも、それは私への優しさだって分かる。創介さんなりの優しさだ。

「……ありがとう、ございます」
「何が」
「何でも、です」

その引き締まった胸に顔を埋める。

 ただでさえ慣れない環境に身を置くことになる。住む場所くらい心休まる場所にしようとしてくれたのだろう。

「家のことは心配するな。あの家には母親もいるし、使用人もいる。数年は俺がいなくても大丈夫だ」
「……はい」

何度抱かれても、この胸に身を寄せると安心する。いつまででもこうしていたくなる。

「二人きりで暮らす分、覚悟しておけよ」
「な、何を、ですか……?」

創介さんが甘く囁くから、とぼけてみせたけれど。身体の奥は正直で、ドキドキと胸が騒ぐ。

「いろいろだ」
「いろいろって……っ」

少し怖くなって思わず開いた唇さえ封じ込められる。

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