雪降る夜はあなたに会いたい 【下】


「小さいな。生まれたばかりの子どもは、こんなに小さかったか――、おお、よしよし」

それまで静かにしていた赤ん坊が、父に抱かれた瞬間に泣き声を上げた。それにまたも慌てふためく父の姿が、可笑しくてたまらない。

「……可愛いな。創介にも似ているが、雪野さんにも似ているだろ。なあ」
「そうですね」

父の隣にそっと立つ継母が、柔らかく微笑んだ。

そんな表情を出来るようになったのは、紛れもなく――。

「――雪野さん。本当に良かった。よく頑張ったわね」

おろおろと、それでいて見たこともないような緩みまくった表情をしている父を横に、継母が雪野に語り掛けた。

「ありがとうございます。この日まで、お義母様にも助けていただいたから。とても、心強かったです」
「ううん。私たちに、こんな幸せを運んでくれて、本当に感謝してる」

それは、子どもが生まれたからだけではない。雪野が継母の心に寄り添い、少しずつ関係を築いていったのだ。

雪野がいて。雪野の家族がいて、俺の家族がいる。同じ空間で、皆が笑い合う。そんな日が来るなんて、思いもしなかった。

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