雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
とりあえず、届いた質問すべてをプリントアウトする。
その中で、目に付いた質問を読んでみると……。
『出勤してまずチェックすることは?』
『社食は利用されますか』
そうだな。まずは、仕事関係のことが気になるのが当然だ。
このあたりまでは良かった。
でも……。
『趣味も含めてずっと続けていることはなんですか』
『体力づくりは何かしていますか』
プライベートな質問が目に入る。
そして、ここから、さらに雲行きが怪しくなってくる。
『奥様とはいつ頃どのように出会われたのですか?』
『奥様は好きなタイプの女性でしたか』
『奥様から、なんと言われるのが嬉しいですか?』
『好きな色は? 愛する奥様のイメージカラーもお願いします』
『奥様の、どんなところを一番可愛いと思いますか?』
『奥様と二人で始めたい趣味的なことはありますか』
『一週間お休みが取れたら奥様と行ってみたいところはどこですか』
『結婚生活の良さを教えてください』
『お子さんは何人くらい欲しいですか』
『お子様は、男の子と女の子どちらが欲しいですか?』
おいおい……。
奥様、奥様って、まるで結婚会見をする芸能人への芸能レポーターの質問みたいだな。
『奥様とは大恋愛だと風の噂で聞いていますが、本当ですか? どんな奥様ですか?』
『大恋愛の末ご結婚されたそうですが、奥様との結婚生活の中で幸せを感じる時はどんな時ですか』
どうして、一社員が常務が大恋愛だって知ってんだよ。風の噂ってなんだよ。どこの情報だよ。その情報は確かなのかよーー!
『奥様との出会いが、もし職場だったとしても恋に落ち、ご結婚されていたと思いますか?』
『もし、奥様が秘書だったら――お仕事にならないですか?(≧◇≦)』
妄想を、聞けと――?
『常務と懇親会がしたいです! もちろん奥様同伴で!』
それって、質問じゃなくて要望だろ――!
『プライベートはどう過ごされていますか? 奥様の魅力を存分に語ってほしいです!』
『お二人の大げんかエピソードを教えてください』
『奥様との愛が溢れるエピソードを!』
『うーん。いろいろと聞きたいことはあるはずなのに、いざとなると思い浮かばない。もう奥様自慢をしていただければ、それでいいです!』
……。
『明日が人生最後の日だとして、今日一日どのように過ごしたいとお考えになりますか?』
『社内報とはもう関係ないのですが、出会う順番が違ったら、私にもチャンスはありましたか!』
仮定……?
アピール?
だいたい、”私”って言われたって、常務は一体なんて答えりゃいんだ――?
仕事関係の質問が1割にも満たない質問表に、俺は盛大に溜息を吐いていた。
「――どうしたの? ああ、例の、常務特集の質問ね?」
隣の広報係にいる俺の同期、三井えみりが突然背後から覗き込んで来た。