雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

「すっごいねぇ。ほとんど女子社員から。それに、全部プライベートのことばかり」
「だろう? 女ってほんと……。榊常務は芸能人かって言うんだよ――」
「あっ!」

俺がぼやいていると、三井がきゃっきゃとはしゃぎ出した。

「これこれ、私が質問したやつだ―。広岡君、絶対この質問ボツにしないでよ? 絶対だからね!」

そう言って三井が指さした質問は――。

『奥様の、どんなところを一番可愛いと思いますか?』

「おまえもじゃねーか!」
「えー? だって、聞きたいじゃない。一度だけ榊常務と廊下ですれ違ったことがあるんだけどね……」

突然話が変わったな――。
そう思って三井を見上げれば、その顔は……もうどこか遠くに飛んで行っている。

「めちゃくちゃ怖そうなのよ? 冷たそうだし厳しそうだし。でも~、スリーピースのスーツ姿がこれまたすごく様になっていてね。オーラも半端ないし、うわっってなった。ああいう人、身近にいないから、圧倒されちゃって。結局、かっこいいのよ。颯爽としていてさぁ。ああ、あの鋭い目でとらえられたら、私逃げられない自信ある……って、何から逃げられないって? もう、やだぁ、広岡君エロイっ」

一人で盛り上がって、一人で照れている。
呆れている俺に構わずに三井は一人語り続ける。

「そんな人が、結婚したって言うじゃない? もう女子社員は、想像力を駆使していろんなストーリーを作り上げては、お昼休みに披露しあってるのよ。そんなところに、この企画! もう、広報誌係もたまにはいい仕事するじゃないっ!」
「いて……っ」

今度は俺の肩をぶっ叩いて来た。

「だから、出来れば、この質問全部聞いてあげてほしいな……」
「おまえは女子社員代表か」

俺は女子社員の妄想を補完するために働いているんじゃない。

「働く女子の栄養源。癒し。それに、夢を見たい。いつかは私も……ってね。でもさ、この質問誰が常務にするの……?」

そんな強面常務に、こんな質問、一体誰がするんだ――?

三井の発言に一瞬恐れ慄いたけれど、まあ、常務なんていうお偉いさんに平社員を派遣するとは思えない。係長か室長が直々にお出ましになるだろう。

そう思ったら他人事ながらに、『ガンバッテクダサイ』と心の中で唱えた。


のに。

のに――!

なんで俺なんだ!


【※作者注】
一つ(三井のもの)以外すべて、以前掲載していたサイトで、読者の方にいただいた質問です。あと、質問に対する感想は、あくまで「広岡」が言っていることということで(笑)💦
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