雪降る夜はあなたに会いたい 【下】

「な、なんですか、その情報! 詳しく聞かせてください」

私は椅子から立ち上がる。

「う、うん。出張中にね、夜、たまたま繁華街の土産物店にいるのを見かけたんだ。常務みたいな人は何を選んでるのかなぁ、なんて興味が湧いてこっそり観察してみたんだけど。そうしたら、タイでは有名な、タイシルクで出来た象のぬいぐるみで。そんなものを、めちゃくちゃ真剣に眺めては手に取っているんだよ」
「なんということ! 榊常務のその後姿、激写したい!」
「――そ、それを見て、常務がそんなものを欲しいと思っているとは考えられないし、ということは、奥様へのお土産かなぁなんて思ってさ。男の僕でも、なんか胸がぎゅっとした」
「するするする! します!」
「……おい、おまえ、いちいち声、大きい――」
「それでそれで? 結局お買い上げしたんですか?」

広岡君を押しやり前のめりになる。

「いや、それがね。それだけ真剣に悩んでたのに、結局買わずに出て来たんだよ。どうやら、決められなかったらしい。どれだけガチで悩んでるんだって話しだよね。で、結局、常務は何か急用ができたみたいで慌ただしく帰国してしまって。それで、僕が代わりに買って帰ったら、もう、それは喜んでくださった!」
「あ~、いい話。ほんと、もう、常務、どれだけ奥様愛してるの?」

手のひらを握り合わせる。

「ますます、お二人のラブラブぶりを目の当たりにしたい。もう、これは絶対常務ご夫妻を引っ張り出しましょう! こうなったら、営業二課と広報誌係両方でお誘いに行けばいいんじゃないですか? これだけ切望されれば、絶対来てくださるはず!」

――ということで、広岡君と古館さんで常務室に出向くことになり……。


いただきました! オッケー、いただいてきました!

拳を突き上げたのは言うまでもない。

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