雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
神原さん伝いで「あまり堅苦しい店にはしないでよい」というお達しをいただいていたので、ごく普通に飲み会で使われる居酒屋を押さえた。
参加者は、営業二課のプロジェクトチームから5名と広報誌係の3名に、私、神原さん、そして榊常務ご夫妻だ。
そろそろ年末年始休暇に入ろうかという金曜日。とうとう打ち上げ当日がやって来た。(作者注;『5. あなたのためにできること』p230後、年末に行われた経済界のパーティー翌週に当たります)
「――広岡く~ん、なんか、今日スーツ気合入ってない?」
「ば、バカを言え。普通だろ。いつもと同じだ」
ふーん。いつもは暗い色味の組み合わせのくせに、この日の彼は、なんとネクタイがピンクだ。
分かりやす過ぎだよ。
「はいはい。そういうことにしておきますよ」
自分のデスクに戻り、広報誌を見返した。
あー、それにしても私が目にしてきた広報誌の中で史上最高の出来だわ。
一体何様の立場でものを言っているかについては、さておいておく。
この広報誌、永久保存確定。
だって。おそらく近い将来、榊常務はうちの会社からいなくなる。それだけは間違いない。
こんな風に実際にお目にかかったり、ましてや一緒に飲めるなんて、きっとこれが最初で最後だ。
いつか、丸菱グループの頂点に立つ人。世界の丸菱だ。もう、私なんかが近付ける人じゃない。
だから、今日は目一杯楽しむぞ――!
デスクの上に飾ってある、常務室で撮った記念写真に視線を寄せた。
会社から徒歩5分ほどのところにある女子にも評判の良い居酒屋に、榊常務ご夫妻と神原さんを除く、総勢9名が既に席に着いている。
常務ご夫妻と秘書の神原さんの到着を待つのみ――。
とは言え、この席順に落ち着くまでに、ひと悶着あった。
本日の出席メンバーを紹介します。
<営業二課のプロジェクトチームの皆さん>
プロジェクトリーダーの吉岡さん(♂)
椚田さん(♂)
"読者さん"(♀)
権藤さん(♂)
古館さん(♂)
※序列順
<広報室広報誌係>
草陰係長
寺内さん
広岡君
<広報室広報係>
三井、つまり私
である。
そんでもって席順はこのように落ち着いた。↓