雪降る夜はあなたに会いたい 【下】
「雪野さんにとって、自分のような人間と一緒になることがいいことなのか。しなくていい苦労をさせることになる。他に、もっと幸せになれる相手がいるんじゃないかと。でも、どうしても雪野さんを諦められませんでした」
「榊さんは、雪野を本当に愛していますか?」
母の鋭い声が空気をぴんと張りつめさせた。
「もちろんです。心から大切に想っています」
「本当にそうでしょうか。あなたはただ、雪野のような人間に傍にいてほしいだけなんじゃないですか? 親の私が言うのもなんですが、雪野は本当に優しい子です。いつも自分のことより他人のことばかり考えてしまう。そんな雪野の優しさは、あなたにとって居心地のいいものでしょう。でも、雪野は? あなたを居心地よくするために雪野はいるの?」
「お母さん!」
捲し立てる母に耐えられなくなった。
「そんな言い方ない。お母さんに創介さんの気持ちの何が分かるの? 私たちの何が分かるのよ。私が何より創介さんといたいの。私が幸せなのよ。だから結婚したいんじゃない!」
母の気持ちは分かる。私を思って不安になるのも、心配してしまうのも。
でも、勝手に創介さんの気持ちを決めつけるのが耐えられなかった。
「雪野はまだ分かっていないの。結婚がどういうものか。二人だけの問題じゃないってこと。家族同士のことだということ」
「そんなこと分かってるよ――」
「雪野」
創介さんが私を見て頷いて見せた。その表情は、とても真摯なものだった。
「心配されるのも、当然のことだと思っています。でも、引き下がるわけにはいきません。本当に雪野さんを愛しているのかと言われましたが、この気持ちに嘘はありません。苦労をかけてしまう時もあると思います。でも、そばにいて雪野さんを守りたい――」
「あなたがいない時は? その時は、どうするんですか?」
「お母さん。もう、いい加減に――」
「あなたが仕事でいない時。雪野が一人でいる時。その時、あなたは雪野を守れますか? 結局、雪野は一人で闘わなければならない」
こんなにも反対されるなんて思わなかった。
母にこんなにも強い気持ちがあったなんて。
結局、その日、母から「娘をよろしくお願いします」という言葉は出て来なかった。