主従夫婦~僕の愛する花嫁様~

【警戒心という鎧を着る、僕】

紅葉は、三日程仕事を休んだ。

その間、雲英とはずっとべったりくっついていた。


「甲斐」
「はい」

「明日から、またお仕事行くね!
明日は、理亜も帰ってくるし!」

並んでソファに座り、映画を見ていた二人。
紅葉が雲英の肩に頭を預けて、雲英は幸せな気持ちに浸っていた。

そんな時にふと、紅葉がテレビ画面を見ながら言った。

「………」
突然、黙ってしまった雲英。
紅葉は、雲英を見る。

「甲斐?」

「そう…ですか……
でも…でも、も…少し、お休みになってはどうですか?
あんなことがあって…紅葉様は心と身体をぼろぼろに汚されたんですから……」
紅葉の頬に触れ、説得するように言う。
しかし、雲英の声は震えていた。

「でも、皆さんにこれ以上ご迷惑はかけられないし」

「でも…でも……せめて一週間は…」

雲英は、必死に説得をする。
紅葉と片時も離れない生活は、雲英にとっての天国だったから。

「甲斐、私はもう…大丈夫だから!
ありがとう!」



次の日。
会社前で、車を降りた紅葉。
「じゃあ、甲斐。
行ってきます!」

「はい、行ってらっしゃいませ!
紅葉様、何かあったらすぐに連絡を!
僕はもう、会社の人間も信用しませんので!」

「もう(笑)
大丈夫だって!」

クスクス笑いながら、紅葉は小さく手を振り会社に入っていく。

その後ろ姿を、左耳の紅葉のピアスに触れながら見つめている雲英。

「もう…誰も、信用しない。
この俺が、紅葉様をお守りする………!」


職場に着くと、社員達に囲まれた。

「紅葉さん!!?」
「紅葉さん、良かった!!」

みんなとても心配していたようで、駆け寄ってくる。
「ご迷惑かけて、申し訳ありません!」

「いいのよ!」
「もう、大丈夫なの!!?」

「はい!大丈夫です!」

「紅葉!大丈夫か!?」
「神くん!ごめんね、心配かけて!」
首を横に振る、神。

そこに、理亜が出勤してきた。

「紅葉!!!?」

「ん?あ、理亜!」

タタタッと駆けてきて、抱き締められた紅葉。
「紅葉!!良かった!!
心配したんだからね!!」

「理亜…ごめんね!ごめんね!」

「もう、大丈夫よ!!
私がいるから!!」

そして神を見ると、紅葉から離れて神に近づく。

神の前に立つと、おもいきり殴った。

「━━━━━ってぇ…!!!!?」

「この…役立たず!!!!
あれだけ言っただろ!!?
紅葉を、守ってって!!」
理亜は、泣いていた。

「わりぃ…」

「理亜!!待って!神くんは、悪くないの!!
私が、警戒心を持たなかったから………」

「いや、いいんだ!
なんか、殴ってもらってスッキリした!
俺も、責任感じてたから」

「神くん…」
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