主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
「━━━━もしかして、紅葉に敬語なのも“過去のことを悟られないように”っすか?」

神が、雲英と亞嵐を見つめて言う。

「あぁ」
「そうだよ!」

「「紅葉様に(お嬢様に)嫌われたくないから」」

「「え?」」

「お嬢様は、神くんと理亜ちゃんのこと“完全に”受け入れていないだろ?」

「紅葉様、いつも志岐と理亜さんに言ってるだろ?
“暴力、暴言はやめて!”って」

「それは……」
「そう…ですけど……」

「お嬢様は、俺と雲英のこと紳士だと本気で思ってる」
「その思いを裏切っていたことがわかったら、嫌われるかもしれないだろ?」

「まぁ…俺も、できる限り紅葉の前では抑えてるけど……」
亞嵐と雲英の言葉に、賛同するように神が言う。


「嫌いには、ならないと思いますよ?
特に、羊さんのことは……!」
しかし、空気を引き裂くように理亜の声が響いた。

「「「え?」」」

「うーん…言葉が違うか……
嫌いに“なれない”と思います!」

「理亜さん?」

「羊さんは、紅葉のこと何だと思ってるんですか?
あの子、そんな柔じゃないですよ?」

「え………」



6年前━━━━━━━━━
紅葉と理亜が、高校一年の時。

紅葉と理亜は、全くの正反対の二人だった。
既に乙組の総長だった理亜と、空神財閥の令嬢。

理亜を、腫れ物のように接するクラスメート達。

(ウザい!ウザい!ウザい!)

そんな中、紅葉だけは“普通に”接していた。

『山神さん、一緒にお昼ごはん食べましょ?』

『はぁ?なんで、あんたと食わないとならねぇんだよ!!?』

『ダメだよ!』

『はぁ?』

『女の子がそんな言葉遣いしちゃ』

『は?』

『山神さんは、女の子だよ?
もう少し丁寧に━━━━━━』

『『きゃぁぁぁ!!?
山神さん!!?』』
クラスメート達が、騒ぎだす。

理亜が紅葉の胸ぐらを掴んでいた。
『山神さ……苦し……』

ゆっくり離した、理亜。
そして、紅葉の顔を覗き込むようにして凄んだ。
『いい?
次、私にウザいこと言ったら、マジで殺るから!』

『でも、私は……
山神さんとお友達になりたいの!』

『………は?』

それからも、事あるごとに声をかけてくる紅葉。

“バカで、めんどくさい女”
理亜は、そんな風に思っていた。
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