主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
「はい、紅葉様。
あと、一口です。あーん?」

「ん…」

「はい!お利口さんです!」
微笑み、紅葉の頭を撫でる雲英。

「………甲斐」
「はい」

「私、もう幼稚園児じゃないよ?」
「わかってますよ?」

「すりリンゴにお薬混ぜるのは、幼稚園児の時の話だよ?
前から言ってるわよね?
私、もう…普通に飲めるんだよ?
リンゴも、すったりしなくていいし。
甲斐、絶対にすりリンゴにお薬混ぜて持ってくるから」

「ダメですか?」

「ダメってことはないよ」

「だったら、いいですよね?」

「う、うん…」
有無を言わさない雲英の雰囲気に、紅葉は少し退き気味に頷いた。

「はい。また、横になってください。
寒気はよくなってるみたいなので、きっと熱は上がりきったみたいですね」
「うん。少し楽にはなったよ」

「良かった!」
雲英は微笑み、食べた食器を持って寝室を出た。

それからも、献身的に世話をする。

汗をかいた身体を丁寧に拭き、着替えさせ、眠るまで頭を撫でる。
頻繁に様子を見に寝室を覗き、体温を測ったり、汗をかいてないか確認したりする。

ピピピ…と体温計の音がなる。
「………37.2度か…
良かった。そんなに酷い風邪ではないみたいだな。
でも、明日も休ませないと!」

雲英はその日のうちに、紅葉の職場に連絡したのだった。


その日の夜。
いつものように、紅葉を抱き締め眠りにつこうとする雲英。

「え?甲斐?」
「あ、申し訳ありません。
起こしてしまいましたね……」

「何してるの?」
「はい?」

「私、風邪引いてるんだよ?」
「はい」

「ダメだよ。一緒に寝たら、甲斐にうつしちゃう……」
「大丈夫です!
うつらないように、しっかり免疫はつけてます!」

「あ、いや、だからって…」
「紅葉様と別々に寝るなんて、考えられませんので」

「甲斐、ダメだよ」
「僕も無理です」

「………」
「はい、寝ましょう!
頭、撫でますから、紅葉様もお休みになってください」

しかたなく、目を瞑る紅葉。
しかし昼間かなり寝たので、寝れない。

対する雲英は、献身的な看病で疲れ、早々に眠った。

「………」
「………」

「……甲斐?」
「………」

「寝てる?」
「………」

「……よし、じゃあ…」
紅葉は、雲英を起こさないようにベッドを降りた。

そして部屋を出て、ソファに横になった。
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