主従夫婦~僕の愛する花嫁様~

【離ればなれの昼】

一方の紅葉━━━━━━

「おはようございます!皆さん」

「「「おはよう~!」」」

紅葉は、会社内でとても人気者だ。
それは空神コーポレーションの令嬢でありながら、気取らず、物腰も柔らかく、謙虚で誠実だから。

社員達からは“紅葉さん”と呼ばれている。

「紅葉~
やっと来たー!
遅いよー!」
その中でも特に仲の良い友人・山神(やまがみ) 理亜(りあ)が、駆け寄ってきた。
紅葉と理亜は、高校と大学の同級生だ。

「理亜、ごめんね!」

「また、(ひつじ)さんが離してくんなかったの?」
理亜は執事と羊をかけて、雲英のことを“羊”と呼んでいる。

「羊じゃなくて!
主人よ?」

「羊よ!
しかも!紅葉にべったりの!
…………って、そんなことはどうでもいいのよ!
加我先輩の代わりの社員が今日から入社してくるみたいよ!」

「そうなんだ!」

「やっとだね!」
「良かったぁ……」
「先輩が抜けてから、負担が凄かったもんね……」

「まぁ…紅葉さんが器用で手際がいいから、なんとかなってたけど……」
「やっぱ…ね…」

紅葉が入社して一週間も経たない内に、リーダーを勤めていた加我という社員が急病で、突如退職したのだ。
突然のことで、社員達はなんとか手分けして仕事をやりくりしていた。

「ほんと…助かりますね!
でも、どんな方かな?」
「それがさ……紅葉……」

「ん?」



そこに課長が来て、朝礼が始まった。
「みんな、おはよう!
━━━━━やっと、社員が来てくれたよ。
退職した加我さんの代わりだ。
簡単に、自己紹介してくれ」

「はい」

「え……」

「初めまして!
志岐(しき) (しん)と言います。
◯◯商事から転職してきました。
歳は22歳ですが、大学在学中から◯◯商事では仕事をしてました。
まだ若輩者ですが、よろしくお願いします!
あ!余談ですが……
志岐 神って名前、呼びにくいので、友人からは“シキガミ”って呼ばれてます!(笑)
皆さんも、気軽にそう呼んでください!」

神の言葉に、社員達は笑いに包まれた。

「志岐くん、わが社の方針は━━━━」
「もちろん!知ってます。
仕事内容と配分を自分達で決めて、残業は行わない。
社員で、助け合って行う━━━━ですよね?」

「あぁ。
今日から、頼むよ!」

「はい!」

「では、みんなも仕事に取りかかってくれ!」
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