主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
神が、自身のデスクに向かう。

「あ!理亜!紅葉!
よろしくな!」

「神くん、どうして?」

「フフ…ヘッドハンティングされたのー」

「え?そうなの!?」

「びっくりだよ!
まさか、紅葉の会社から声がかかるなんてさ!」

「だからって、どうして来てくれたの?
◯◯では、今年から役職もらえるはずだったんじゃ……」

「んー?
紅葉の会社だったから!」
微笑み言う、神。

「え……」

「大事なダチだからな!
そんな子の会社から、助けを求められたら……
断るなんて出来ねぇよ!
まぁ……◯◯ではやることはやったし、盗めるもんは盗んだし(笑)
あ!勘違いすんなよ?
盗むっつうのは、技術とか能力ってことだぞ?(笑)」

「そっか!
ありがとう!」

「ううん!
………つか、理亜!なんで、睨んでんの?」

「なんで来んのよ」

「だからぁ!今、説明したじゃん!」

「私は会いたくなかった!」

「はい?
まだ怒ってんの?」

「は?怒ってないわよ!
嫌ってんのよ!」

「はぁー、冷てぇなぁー
“愛し合った仲”なんだからさ!
俺は今でも覚えてるよ?
お前の身体の何処にホクロがあるかも。
腰のホクロなんか━━━━━」
「神!!てめぇ…!!?」
「おいおい…そんな怒んなって!
………つか…せっかくの再会、もっと喜べよ?」

「喜ばねぇよ!」

「ちょっと!二人とも!
理亜、言葉遣い!
それに!ここ、会社!
お仕事、しなきゃ!」

神は、紅葉と理亜の高校の同級生。
そして理亜と神は、高校の時付き合っていた。

理亜と神。
この二人━━━━かなり喧嘩が強く、二人とも学生の頃暴走族の総長だった。

理亜は“乙組(おとぐみ)
神は“シキ神”

当時は、黄金時代と言われていた程、最強だった。

高校入学当時から、お互いに既にチームを引っ張っていた理亜と神。

付き合ったのも、手を組むためもあったからだ。
しかし、神の浮気の多さと理亜の粗っぽさが、積もりに積もって二人は別れた。


「━━━━あ!雲英さんは、元気にしてる?」
仕事をしながら、神が声をかけてくる。

「うん!
理亜に聞いてないかな?
私達、結婚したの!」

「え!!?マジか!?」

「うん/////」

「おめでとう!」

「フフ…ありがとう!」

「へぇー!
でもー俺…紅葉のこと、狙ってたんだけどなぁー(笑)」
デスクに頬杖をつき、笑いながら言う。

「え…!?/////」
神の顔が近づいてくる。
神は暴走族の総長にして容姿も整っていて、当時女性ファンも多かった。

そんな神に顔を覗き込まれ、紅葉は顔を赤くする。

そこに神の頭上から、書類が沢山挟まったバインダーが降ってきた。
バコッと嫌な音がして、殴られたのだ。


「私の大事な親友、口説いてんじゃねぇよ!!?」

黒い雰囲気を醸し出した理亜が、神を睨み付けていた。
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