主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
「━━━━━━で、二人揃って泥だらけになって……!」

「へぇー!フフ…なんだか、想像つかないです(笑)」

紅葉は、亞嵐に雲英との小学生の時の昔話を聞いていた。

「僕達、結構活発だったんですよ?(笑)」
「フフ…そんな二人を見てみたいです(笑)」

楽しい時間が流れていた。

そこに、亞嵐のスマホが鳴り出した。
「ん?
…………すみません。少し席外しますね!」

「はい。ごゆっくりどうぞ?」

ベランダに出て、窓を閉める。
窓越しに紅葉を見ながら、電話に出た亞嵐。

「ん?なんだよ、雲英。
今、スッゲー良い時間を過ごしてたのに」

『叔母に聞いた。
今、紅葉様といるんだろ?』

「あぁ。楽しく会話を楽しんでる最中」
窓越しに紅葉に手を振ると、紅葉も微笑み手を振ってくる。

「ほんっと、可愛らしい人だな、お嬢様/////
お前が羨ましいよ。
あの笑顔を独り占め出来んだから!」

『━━━さない』

「あ?」

『お前にだけは、絶対渡さない』

「は?何言ってんの?」

『お前だけだから』

「は?」

『………いや、何もない』

「はぁ…大丈夫だよ」

『は?』

「俺は、お嬢様を“幸せ”には出来ないから」

『亞嵐?』

「お嬢様は、お前しか見てないからな。
俺のこと信頼してくれてってけど、壁があるんだ。
絶対割れない、頑丈な壁。
俺には、無理矢理その壁を割ることは出来ねぇ。
お嬢様を傷つけたくねぇからな」

『亞嵐…』

「まぁ、とにかく!
お前が帰るまで、安全にお守りするからさ!
“ゆっくり”帰っておいで?」



「━━━━お嬢様、昼食にしませんか?」
部屋に戻り、紅葉に声をかける。

「あ、はい!
じゃあ、お弁当を温めますね!」

「あ、それは僕が!」

「え?でも、お客様にその様なことをさせるわけには……」

「お客様…か……」

「え?」
ポツリと呟く亞嵐に、紅葉が聞き返す。

「僕は、雲英の兄…なんですよね?」

「え?あ、はい!」

「だったら……僕のことも“亞嵐”って呼んでください」

「え?」

「…………え?あ、す、すみません!
今のなし!
俺、何言ってんだろ……
ほんと、すみません!」
思わず言ってしまい、ペコペコ謝る亞嵐。

「わかりました、亞嵐さん!」

そんな亞嵐に、紅葉は微笑み言った。
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