主従夫婦~僕の愛する花嫁様~
「か、甲斐!!?」

「紅葉様、そのお気持ちとても嬉しいです!」

「あ、えーと…」

「貴女は本当に、僕にはもったいない方だ……!」

「甲斐…」

「紅葉様、僕は構わないんですよ?」

「え?」

「他人にどう思われようと、紅葉様が僕を必要としてくれたらそれで!」

「甲斐…」

「だから結婚式、大歓迎ですよ!」

「………ううん。いいの。
ありがとう!甲斐」

紅葉はゆっくり雲英に近づき、抱きついた。


「━━━━じゃあ、邪魔者は帰りまーす(笑)」

「え?亞嵐さん、夕食一緒に食べませんか?」

「亞嵐…さん?
紅葉様、いつの間に!!?」

気を遣って帰ろうとする亞嵐。
呼び止める、紅葉。
紅葉の亞嵐への呼び方に驚愕する、雲英。

三人の視線が、交差する。

「きっと雲英は、今すぐにでもお嬢様を抱きたいと思っているはずです。
それに、僕もそんな無粋な真似はしたくない」

「亞嵐…さん…」

「ね?
では、失礼します!」

「こちらこそ、亞嵐さんのおかげでお留守番寂しくありませんでした!
本当に、ありがとうございました!」

亞嵐は、小さく手を振り出ていった。

ドアがガシャンと閉まると、ふわりと後ろから抱き締められた紅葉。

「ん?甲斐?」

「━━━━━━いつの間に、そんなに仲良くなってるんですか?」

「え?」

「もしかして、亞嵐のこと━━━━━」

「そんなわけな━━━━━」
「あ!ダメですよ!
振り向かないでください!!」
弁解しようと振り向こうとする紅葉を制し、更に抱き締める力を強めた雲英。

「甲斐、聞いて?」

「無理です。
今は聞きたくない」

「甲斐…」

「しばらく、このまま……
僕は今、とんでもない顔してるから……」

「………」
「………」

「………」

しばらく沈黙が続いて、雲英が口を開く。

「…………申し訳ありません」
「え?どうして謝るの?」

「嫉妬…してしまいました……」

「………甲斐が心配するようなことないよ」

「はい」

「ほんとだよ?
亞嵐さんは、甲斐のお兄様みたいって話をしたの。
それで亞嵐さんが、それなら“亞嵐”って呼んでほしいって言ってこられて……」

「僕は、弟ですか?」

「え?フフ…うん!」

「亞嵐のような兄は嫌です」
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