悪役令嬢はクールな魔道師に弟子入り致します

転生と出会い

　鏡に映る自分はどう見ても自分じゃない。
　
　というか、今頃私はアツシと最初のデートだったはず。
　何しろ、アツシと付き合うためにどれだけ頑張ったか。一晩は話せるくらいの努力で彼とここまで来たのだ。
　
　今日のためにどれだけ準備してきたことか。まず朝から美容院へ行ってくせ毛をセットしようと思ったんだ。

　思い出した。美容院へ行く途中、歩道の横から何故か車が突っ込んできた。それで跳ね飛ばされて、死んだかもと思ったんだ。すごく痛くて血が出て……。ま、まさか私……。

　いや、そんなはずない。病院に運ばれて声をかけられた記憶がある。死んだはずないのに。手術になると言われた。そして……多分、薬で眠っただけだと思うんだけど……。

　もう一度、鏡を見る。
　見たことあるような、ないような……。
　この巻き毛……。少しつり目の青い眼……。

　すると、部屋をノックする音がした。

　「リリアーナお嬢様、準備はよろしいですか？」

　リリアーナ？聞いたことのある名前。しかもこの顔。まさか……。とりあえず、返事をしなくちゃ。

　「え？ああ、どうぞ」

　そう言うと、ドアを開けた。黒髪をお下げに編んだ侍女が箱を持って入ってきた。

　「お嬢様。靴はこちらで良かったですか？」

　そう言って、ドレスと同じ色のハイヒールを出してくれた。

　「あ、え、いいんじゃないかしら」

　侍女は不思議そうにこちらを見た。

　「なんか、お嬢様、変わられましたね。やはり高熱で一度意識を失われたからですかね？目が覚めたときも大分記憶が飛んでましたもんね」

　「……えっと、今日の予定は？」

　「え？大丈夫ですか？今日は王宮で舞踏会の予定ですよ。王太子様と婚約発表後初の舞踏会です」

　ウキウキと話し出す侍女の言葉を遮った。

　「あの。誰と誰の婚約？」

　「だから、オスカー王太子様とリリアーナ様の婚約ですよ」

　リリアーナ様？オスカー王太子様……。
　まさか……。