失恋タッグ

裏切り



******************


「柚葉さん2年連続功労賞、おめでとうございます」

「秋月、倉木ペアには適わないですね」

職場の皆から祝いや称賛の声ともに私、秋月柚葉(あきつきゆずは)のグラスにはなみなみとビールが注がれた。

私はその度に「ありがとうございます」と一向に減らないグラスに愛想笑いを浮かべながら、息を吐く。

お酒は強い方だとはいえ、そろそろ限界を迎えている。

隣の席に長時間居座っていた常務がトイレに席をたって、漸く解放された私はホッと一息ついてビールを煽った。

すると、再び後ろから「秋月さん、おめでとうございます」と女性の声が聞こえてきた。

ああ、やっと解放されたと思ったのに...。

そう思いながらも、「ありがとうございます」とニッコリと営業スマイルを張り付けて振り返った。


「って、栞奈かっ」

私はその声の主が気のしれた同期の北村栞奈(きたむらかんな)だと分かって、すぐに素の顔に戻した。

栞奈は「何、その作ったような笑顔っ」とからかい交じりに
先程まで常務が座っていた席に腰を下ろした。

そんなに違和感のある笑顔だっただろうか..

私は栞奈に作ったような笑顔と指摘され、思わず頬に手が伸びる。

「人気者は大変ね。河神常務、1時間10分も柚葉嬢(ゆずはじょう)の隣を陣取ってたわよ」

栞奈は腕時計に目を落としながら顔をしかめた。


< 2 / 108 >

この作品をシェア

pagetop