失恋タッグ

憧れの人

side航

「約束ですよ···───」

僕はエレベーターが閉まると、最上階の15階のボタンを押した。

最初に押した10階は素通りして、15階で降りる。

向かったのは突き当りの社長室。

社長の相模常義(さがみつねよし)は、母の兄───つまり僕の叔父にあたる。

僕と叔父の関係はごく一部の人間しか知られていない。

叔父は58歳だが、独身で子どもはいない。

本人曰く、恋愛はいくつもしてきたが、皆タイミングが合わなかったとか···。

叔父は子どもがいない分、甥っ子である僕が余程可愛らしい。

この会社はいずれ航に任せるからと、子どもの頃からずっと聞かされ続けていた。

習い事にまで口を出してくる叔父のせいで、僕は遊ぶ暇もないほど忙しい幼少期を過ごした。

一時期は勝手に決められていく将来に嫌気が差し、叔父さんから逃げるように海外へ留学したのだ。


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