失恋タッグ
しかし、叔父は会社で新商品が出るたびに留学先にその商品を送りつけてきた。

そして、メールで感想を要求してくるのだ。

俺は面倒くさいながらも、新商品を試食しては律儀に感想を叔父に送ることを繰り返してきた。

今思えば、まんまと叔父さんの戦略に乗せられてしまっていたのだと思う。

自分が売れると思った商品がヒットしたと聞けば、やっぱりそうだろうと自尊心が満たされた。
逆に味は美味しいのにヒットしなかった商品があれば何故ヒットしなかったのかと分析するようになったのだ。

パッケージのインパクトが欠けているとか、色味が地味でお店の棚の色と同化してお客の目につきくいとか、叔父とメールを通して議論する。

そんなことを繰り返していくうちに、少しずつ叔父の仕掛けた罠に絡めとられるように、僕は叔父さんの会社に興味を持つようになる。

そして、大学を卒業後、このアンジュ製菓に就職したのだ。

しかし、アンジュ製菓に入社したからといって会社を継ぐつもりは更々ない───

僕の将来設計は、そこそこの地位に付き、そこそこの給与をもらい、仕事や遊びが落ち着いてくる35歳辺りで結婚。

大きな責任を負う社長などリスクのある人生は送りたくない───

頑なに継ぐことを拒否する僕に、近頃は叔父も諦めてきたようだ。

入社してすぐ営業部に配属されると、営業の仕事が自分に合っていたのか営業部のエースとまで言われるようになった。

しかし、僕はそもそもの希望部署は商品開発部。

叔父に頼んで、商品企画部に配属先を変更してもらったのだ。


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