3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
「ありがとうございます。それでは、楓様の連絡先をお送りますので後はご本人同士でやり取りして下さい。……それと……」

楓様の連絡先が聞けるという夢見たいな話に驚愕している最中、何やら珍しく口籠る白鳥様のご様子に私は訳が分からず首を傾げる。

「参考までに、その日は楓様のお誕生日です。では、よろしくお願いします」
 

プツン。


そして、何を言われるのかと思いきや、とんでもない情報を最後に落とされてしまい、私は通話が切れた後でも体が硬直したまま、なかなか動くことが出来なかった。



……まさか、こんな事になるなんて。

楓様がまた宿泊されるのかと期待していたら、休日に二人でお出掛けすることになってしまうとは。

しかも、その日は楓様のお誕生日だなんて……。


段々と事の大きさを認識し始めてきた私は、徐々に体が震え出してくる。

これは夢じゃないのかと思えるくらい、突拍子もない展開に、私の頭は今でも混乱している。

けど、それはしっかりと現実に起こった話だという事を裏付けるように、ショートメールの通知音が鳴り、見ると白鳥様から楓様の電話番号が送られてきた。


「美守先輩何があったんですか?なんか顔が真っ青ですけど?」

一向に言葉を発さず呆然とする私の顔を、桜井さんはとても心配そうな面持ちで覗き込む。

それから目が合った瞬間、私の意識は一気に現実へと引き戻された。

「ささささ桜井さんっ!どうしましょうっ!!」

まるで藁にもすがるように、私はまだ頭の中が整理しきれていないまま、とりあえず先程の会話を彼女に伝えた。

すると、やはり予想していた通りといおうか、桜井さんはこれまでにないくらい目を輝かし始めて、何故か私の両手をしっかりと握りしめてくる。

「美守先輩チャンスです!というか、きっとこれは神様の思し召しです!なので、やはり奪ってしまいましょう!東郷様をっ!」

そして、何とも不穏なことを堂々と言って退けてくるので、私はこれ以上何も言う事が出来ず、再びその場で固まってしまったのだった。
< 136 / 327 >

この作品をシェア

pagetop