3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
まさかそんな要望をされるとは。
それは楓様は私の手料理が食べたいということでしょうか。
もしそうだとしたら、こんな嬉しい話はない。
可能なら是非とも作って差し上げたいし、出来るなら朝晩毎日でもいいくらい。
楓様の健康を考えてメニューを決めて作って、それを召し上がって頂ければ、それこそ本当に新婚みたいで夢のような話。
楓様は忘れて欲しいと仰っていたけど、可能かどうか今度確認してみてもいいかもしれません。
そうやって、どんどんと妄想が膨らんでしまうのを何とか中断して、早速食事の手配をするために私は足早に部屋を出た。
結局夕食のメニューは病み上がりなのであまり胃に負担をかけず栄養を補充出来そうなものということで、和食好きな楓様のために鶏鍋を厨房にオーダーした。
お食事をお持ちしても無反応なのは相変わらずで、お気に召して頂いたのかは分からないけど、締めにご用意した雑炊までしっかり召し上がって下さったので、私は満足気に食べ終わった食器を片付けていく。
いつもなら、そのまま残務処理で書類を見ながらパソコンのキーボードを打ち始めるけど、今日は本当に仕事を全部切り上げてきたのか。
ソファーに座って携帯を見ながら一息ついている姿に、私はホッと胸を撫で下ろす。
「……あ。そいうえば、この前お茶用意してたよな。今飲みたいんだけど」
すると、ここであのハーブティーを思い出して下さったことに意表をつかれた私は、軽い感動を覚え、表情がみるみると明るくなり始める。
「はい!すぐお持ち致しますね」
そして、喜びのあまりつい声に力が入ってしまったけど、気にせず食器をワゴンに乗せ終わると、すぐに部屋を後にしてお茶の準備に取り掛かった。
「嬉しいです。楓様からそう仰って頂けるなんて」
それから、私は上機嫌になりながら、満面の笑みで適温に沸かしたお湯をティーポットに注ぎ込み、ハーブーの香を堪能した。
「ただのお茶くらいでか?」
そんな私を呆れるような目で見ながら仰った楓様の言葉が腑に落ちなくて、軽く頬を膨らませる。
「リラックス効果のある茶葉を色々調べて厳選したんですよ。それなのに、前回は全く飲んで下さらなかったから……」
本当は押し付けがましく茶葉を用意した苦労話なんてするつもりは全くなかったけど、あの出来事を振り返ると何だか悔しくなってつい愚痴を漏らしてしまう。
「あの時は悪かった。とりあえず、今回もこっちに来て一緒に飲めよ。もう余計なことはしないからさ」
しかし、楓様は私の不満に対して素直に謝って下さった上、柔らかく微笑んでまたもや隣に座るように催促してくる姿がまるで無垢な少年のようで、私は見事心を持っていかれてしまう。
本当に、昨夜の出来事からあの刺々しい言動はなく、終始穏やかな表情と物言いに、今までとの差が激しすぎて心臓がもたない。
もしかしたら、これが本来の楓様の姿なのかもしれない。
一匹狼の正体は、こんなにもよく笑う温かいお方だったのでしょうか……。
そう思うと、溢れ出る愛しさが胸を締め付けていき、堪えきれず私はトレーにティーポットとカップを二つ乗せて、言われた通り楓様の隣に座る。
今度は肩が触れるとまではいかないけど、それなりに近い場所に。
「はい、どうぞ」
ティーポットをゆっくり揺らして馴染ませてから、交互にお茶を注ぎ、湯気立つカップを楓様に渡す。
「ありがとう」
それを受け取り、口元を緩ませながら自然な流れで仰った一言に、私はまたもや意表をつかれてしまう。
あの楓様にお礼を言われるなんて。
何度も訪れる初めてにもう驚いてはいけないと自制したはずなのに、やっぱり一挙一動に反応してしまうのは、どうしようもないことなのでしょう。
先程からずっと鼓動が鳴りっぱなしの私は、前回同様気持ちを落ち着かせるためにハーブティーをゆっくり口に運ぶ。
「確かに、美味いわ。……酒以外のものも悪くないんだな……」
すると、今度は楓様の方から先に味の感想を頂けて、喜びに気持ちが舞い上がろうとした手前、何故か憂げな目でポツリと呟いた最後の言葉に、私は何だか引っかかるものを覚えた。
それは楓様は私の手料理が食べたいということでしょうか。
もしそうだとしたら、こんな嬉しい話はない。
可能なら是非とも作って差し上げたいし、出来るなら朝晩毎日でもいいくらい。
楓様の健康を考えてメニューを決めて作って、それを召し上がって頂ければ、それこそ本当に新婚みたいで夢のような話。
楓様は忘れて欲しいと仰っていたけど、可能かどうか今度確認してみてもいいかもしれません。
そうやって、どんどんと妄想が膨らんでしまうのを何とか中断して、早速食事の手配をするために私は足早に部屋を出た。
結局夕食のメニューは病み上がりなのであまり胃に負担をかけず栄養を補充出来そうなものということで、和食好きな楓様のために鶏鍋を厨房にオーダーした。
お食事をお持ちしても無反応なのは相変わらずで、お気に召して頂いたのかは分からないけど、締めにご用意した雑炊までしっかり召し上がって下さったので、私は満足気に食べ終わった食器を片付けていく。
いつもなら、そのまま残務処理で書類を見ながらパソコンのキーボードを打ち始めるけど、今日は本当に仕事を全部切り上げてきたのか。
ソファーに座って携帯を見ながら一息ついている姿に、私はホッと胸を撫で下ろす。
「……あ。そいうえば、この前お茶用意してたよな。今飲みたいんだけど」
すると、ここであのハーブティーを思い出して下さったことに意表をつかれた私は、軽い感動を覚え、表情がみるみると明るくなり始める。
「はい!すぐお持ち致しますね」
そして、喜びのあまりつい声に力が入ってしまったけど、気にせず食器をワゴンに乗せ終わると、すぐに部屋を後にしてお茶の準備に取り掛かった。
「嬉しいです。楓様からそう仰って頂けるなんて」
それから、私は上機嫌になりながら、満面の笑みで適温に沸かしたお湯をティーポットに注ぎ込み、ハーブーの香を堪能した。
「ただのお茶くらいでか?」
そんな私を呆れるような目で見ながら仰った楓様の言葉が腑に落ちなくて、軽く頬を膨らませる。
「リラックス効果のある茶葉を色々調べて厳選したんですよ。それなのに、前回は全く飲んで下さらなかったから……」
本当は押し付けがましく茶葉を用意した苦労話なんてするつもりは全くなかったけど、あの出来事を振り返ると何だか悔しくなってつい愚痴を漏らしてしまう。
「あの時は悪かった。とりあえず、今回もこっちに来て一緒に飲めよ。もう余計なことはしないからさ」
しかし、楓様は私の不満に対して素直に謝って下さった上、柔らかく微笑んでまたもや隣に座るように催促してくる姿がまるで無垢な少年のようで、私は見事心を持っていかれてしまう。
本当に、昨夜の出来事からあの刺々しい言動はなく、終始穏やかな表情と物言いに、今までとの差が激しすぎて心臓がもたない。
もしかしたら、これが本来の楓様の姿なのかもしれない。
一匹狼の正体は、こんなにもよく笑う温かいお方だったのでしょうか……。
そう思うと、溢れ出る愛しさが胸を締め付けていき、堪えきれず私はトレーにティーポットとカップを二つ乗せて、言われた通り楓様の隣に座る。
今度は肩が触れるとまではいかないけど、それなりに近い場所に。
「はい、どうぞ」
ティーポットをゆっくり揺らして馴染ませてから、交互にお茶を注ぎ、湯気立つカップを楓様に渡す。
「ありがとう」
それを受け取り、口元を緩ませながら自然な流れで仰った一言に、私はまたもや意表をつかれてしまう。
あの楓様にお礼を言われるなんて。
何度も訪れる初めてにもう驚いてはいけないと自制したはずなのに、やっぱり一挙一動に反応してしまうのは、どうしようもないことなのでしょう。
先程からずっと鼓動が鳴りっぱなしの私は、前回同様気持ちを落ち着かせるためにハーブティーをゆっくり口に運ぶ。
「確かに、美味いわ。……酒以外のものも悪くないんだな……」
すると、今度は楓様の方から先に味の感想を頂けて、喜びに気持ちが舞い上がろうとした手前、何故か憂げな目でポツリと呟いた最後の言葉に、私は何だか引っかかるものを覚えた。