3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
これもハイブリット車なのか、とても静かな音で走り始め、私は高鳴る鼓動を抑えながら運転する楓様の横顔を盗み見する。
瀬名さんの時もそうでしたが、意中の男性が運転する姿は何てこんなにも素敵なのでしょう。
しかも、あの楓様の車に同乗出来るなんて、今でも信じられない。
車内は瀬名さんと同様に余計な物が一切なく清潔に保たれ、芳香剤の香りもなく、楓様のいい香りに包まれていてそれだけで心が落ち着いてくる。
今回はスーパーぐらいしか行かないので、今日の楓様のお召し物は紺色のシャツと黒色のジーパンと黒いスニーカーという前回と違いとてもラフな姿。
けど、それも普段とのギャップ差に心が思いっきり揺さぶれる私は、暫く楓様から目を離すことが出来なかった。
かくいう私も、今日のコーデは悩んだ結果、白い花柄レースのブラウスに、紺糸のスキニーパンツというシンプルな服装を選びつつ、髪はポニーテールにして滅多に付けないパールが施されたシルバーのイヤーカフと、同じくダイヤが一つ付いたシルバーのオープンハートネックレスを付けてさり気なく気合を入れてみる。
すると、密かに楓様を覗き見していたら、赤信号で車が停まった途端、楓様もこちらに視線を向けてきて、目が合った私は自然と頬に熱を帯びていく。
その上、なぜか無言のまま凝視されてしまい、訳が分からず狼狽えていると、不意に楓様は口元を緩ませてきた。
「今日の格好も新鮮で良いな」
そして、さり気なく褒め言葉を頂いてしまい、面を食らった私は一瞬その場で固まってしまう。
「……あ、ありがとうございます。楓様もラフな姿がとても素敵です」
けど、自分も思っていた事をしっかり伝えようと、恥じらいながらも胸の内を正直に明かすと、これ以上楓様の顔を見ていることが出来ず、赤面状態のままつい視線を逸らしてしまった。
今日もということは、この前の時もそう思って頂けたのでしょうか。
だとしたら、服装選びに時間をかけていたことも全て報われます。
そんな達成感を覚えた私は喜びに胸が震え、暫く宙に浮いているようなフワフワとした気持ちで心が満たされていた。
それから車を走らせること三十分ちょっと。
今日は休日とあってそれなりに道は混んでいたけど、楓様の隣に座っていれば時間はあっという間に過ぎ去り、気付けば大型スーパーの前に到着していた。
「……あ。そういえば言い忘れていたけど」
私は停車した車から降りようとシートベルトを外した瞬間、ポツリと呟いた楓様の一言により動きが止まる。
「俺の家、調理器具の類殆どないぞ。調味料とかも」
それから後に続く衝撃的事実に、私はまたもやその場で固まってしまった。
「そ、それでは家にある物って一体何なんでしょうか?」
そういう物はあって当然だと思っていた私は、根本的な部分の話に慌てふためいてしまう。
「……あー。小さい鍋が一つあったかな。それ以外は何もない。調味料は塩と砂糖ならあるぞ」
「それは当たり前です。というか、殆どと言うよりは、ないに等しいですね」
何故か最後は物凄いドヤ顔で言われてしまい、私はつい冷静に突っ込んでしまった。
……どうしましょう。とんだ盲点でした。まさかここまで何もないとは。
全くの予想外の事態に打ちひしがれてしまい、冷や汗が流れ始める。
確かにお忙しい時はホテル生活をしていて、きっと普段でも自炊をする時間なんてないのでしょう。
よくよく考えてみれば納得出来る話なのだろうけど……。
「とりあえず、食材の前に先ずは調理器具から買い揃えましょう」
じゃないと何も出来ません。
……と、心の中で一言付け加えると、軽い気持ちで来たはずの買い物が何やら大掛かりな話になってしまい、私は密かに肩を落とす。
けど、楓様と一緒なら楽しみの一環にもなると思うので、私は気持ちを切り替え、更なる気合を入れてこの買い物に挑むことにした。
瀬名さんの時もそうでしたが、意中の男性が運転する姿は何てこんなにも素敵なのでしょう。
しかも、あの楓様の車に同乗出来るなんて、今でも信じられない。
車内は瀬名さんと同様に余計な物が一切なく清潔に保たれ、芳香剤の香りもなく、楓様のいい香りに包まれていてそれだけで心が落ち着いてくる。
今回はスーパーぐらいしか行かないので、今日の楓様のお召し物は紺色のシャツと黒色のジーパンと黒いスニーカーという前回と違いとてもラフな姿。
けど、それも普段とのギャップ差に心が思いっきり揺さぶれる私は、暫く楓様から目を離すことが出来なかった。
かくいう私も、今日のコーデは悩んだ結果、白い花柄レースのブラウスに、紺糸のスキニーパンツというシンプルな服装を選びつつ、髪はポニーテールにして滅多に付けないパールが施されたシルバーのイヤーカフと、同じくダイヤが一つ付いたシルバーのオープンハートネックレスを付けてさり気なく気合を入れてみる。
すると、密かに楓様を覗き見していたら、赤信号で車が停まった途端、楓様もこちらに視線を向けてきて、目が合った私は自然と頬に熱を帯びていく。
その上、なぜか無言のまま凝視されてしまい、訳が分からず狼狽えていると、不意に楓様は口元を緩ませてきた。
「今日の格好も新鮮で良いな」
そして、さり気なく褒め言葉を頂いてしまい、面を食らった私は一瞬その場で固まってしまう。
「……あ、ありがとうございます。楓様もラフな姿がとても素敵です」
けど、自分も思っていた事をしっかり伝えようと、恥じらいながらも胸の内を正直に明かすと、これ以上楓様の顔を見ていることが出来ず、赤面状態のままつい視線を逸らしてしまった。
今日もということは、この前の時もそう思って頂けたのでしょうか。
だとしたら、服装選びに時間をかけていたことも全て報われます。
そんな達成感を覚えた私は喜びに胸が震え、暫く宙に浮いているようなフワフワとした気持ちで心が満たされていた。
それから車を走らせること三十分ちょっと。
今日は休日とあってそれなりに道は混んでいたけど、楓様の隣に座っていれば時間はあっという間に過ぎ去り、気付けば大型スーパーの前に到着していた。
「……あ。そういえば言い忘れていたけど」
私は停車した車から降りようとシートベルトを外した瞬間、ポツリと呟いた楓様の一言により動きが止まる。
「俺の家、調理器具の類殆どないぞ。調味料とかも」
それから後に続く衝撃的事実に、私はまたもやその場で固まってしまった。
「そ、それでは家にある物って一体何なんでしょうか?」
そういう物はあって当然だと思っていた私は、根本的な部分の話に慌てふためいてしまう。
「……あー。小さい鍋が一つあったかな。それ以外は何もない。調味料は塩と砂糖ならあるぞ」
「それは当たり前です。というか、殆どと言うよりは、ないに等しいですね」
何故か最後は物凄いドヤ顔で言われてしまい、私はつい冷静に突っ込んでしまった。
……どうしましょう。とんだ盲点でした。まさかここまで何もないとは。
全くの予想外の事態に打ちひしがれてしまい、冷や汗が流れ始める。
確かにお忙しい時はホテル生活をしていて、きっと普段でも自炊をする時間なんてないのでしょう。
よくよく考えてみれば納得出来る話なのだろうけど……。
「とりあえず、食材の前に先ずは調理器具から買い揃えましょう」
じゃないと何も出来ません。
……と、心の中で一言付け加えると、軽い気持ちで来たはずの買い物が何やら大掛かりな話になってしまい、私は密かに肩を落とす。
けど、楓様と一緒なら楽しみの一環にもなると思うので、私は気持ちを切り替え、更なる気合を入れてこの買い物に挑むことにした。