3121号室の狼〜孤高な冷徹御曹司の愛に溺れるまで〜
楓さんと出会えたこと。

始めのうちは、なかなか心を開いてくれなくて大変だったこと。

でも、そんな彼を深く知ることによって今では自分にとって、とても大切で愛しくて掛け替えのない存在になったということ。

そして、もう楓さんは孤独な一匹狼ではないということ。


全ての出来事を余すことなくお母様に伝えたくて、気付けば私達は長い間ずっと手を合わせ続けていた。



「それじゃあ、そろそろ行くか」

「はい」

ようやく合掌が終わり、楓さんは私を見上げて柔らかく微笑むと、私も笑顔で首を縦に振って応える。
それから、布袋を手に持って立ち上がり、その場から離れようとしたところ、私はそれを引き止めるように咄嗟に彼の服を軽く掴む。

まだ、お母様の前で言い残したことがあり、それが今彼に一番伝えたい言葉でもあるから。
溢れる想いに拳を小さく握りしめて、きょとんとした表情でこちらを振り返る楓さんの目を私はじっと見つめる。

「楓さん、私達幸せになりましょうね」

そして、満面の笑みで心からの希望を伝えた。

「ああ。そうだな」

その気持ちを嬉しそうに受け止めてくれた楓さんは、私に負けないくらいの明るい表情で微笑み返す。


すると、そんな私達をまるで祝福するように、何処からか白い蝶々が飛んできて、墓石の前に捧げたグラスへと静かに降り立ったのだった。



〜〜Fin〜〜
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