転生アラサー腐女子はモブですから!?
最悪の出会い
控え室へと戻ってきたアイシャは、一瞬目に入った鏡の前に立ち大きなため息をつく。
(やっぱり、これはやりすぎじゃないかしら)
鏡の中には、ヒラヒラのピラピラのレースがふんだんに使われたピンクのドレスに身を包み、髪をアップにまとめた少女が写っていた。
確かに美人だとは思う。前世と比べたら月とスッポン。
贅沢だと言われてしまえばそれまでだが、軽く化粧を施された顔は七歳にしては迫力があり過ぎる。ゴージャスな金髪につり目がちなコバルトブルーの瞳が迫力を醸し出しているのは仕方ないにしても、アップにまとめられた髪型のせいで、いつもより数割り増しキツい印象を受ける。
(こんなに完璧に仕上げなくても……)
髪をフワッと下ろすだけで柔らかい印象になるのに、わざわざアップにするなんて、嫌がらせとしか思えない。『お嬢さま、まるで花の妖精です!』と言ったメイドの満面の笑みを見れば嫌がらせではないと分かるが、この顔にピンクは似合わない。
(これじゃ、何処ぞの悪役令嬢みたい……、まさか悪役令嬢じゃないよね?)
アイシャはゴージャス過ぎる自身の顔を見つめ、内心冷や汗をタラタラ流す。
(私が悪役令嬢だなんてあり得ない。それに、金髪はエイデン王国にはよくいる髪色だし、ね)
そんな慰めを心の中でつぶやいていても、巣食った不安は消えない。
(こんな誰もいない静かな部屋にいるから、色々考えてしまうのよ)
鏡の前から立ち去り、窓辺へと近づき外を眺めれば、ちょうど薔薇の生垣で囲われた我が家の庭園が見渡せた。気分転換に窓をあければ、爽やかな風が芳しい薔薇の香りを届けてくれる。
ぼんやりと庭園を眺めていたアイシャは、あまりの驚きに叫び声をあげた。
「ウソ!! 何、あのスリーショット!」