転生アラサー腐女子はモブですから!?
「俺達がアイシャにアプローチしているのは、リンベル伯爵家と姻戚関係になりたいからだって!? しかも愛人を囲ってもいいだなんて、何を勘違いしたら、そんな解釈に行き着くんだ!!」

「えっ? 違うの?」

「いいか、アイシャ。俺もリアムもノア王太子だって、リンベル伯爵家と姻戚関係になる事には何の興味もない。俺達はアイシャと結婚したいんだ。アイシャ以外の女と結婚するつもりもない! 他の二人がどうかは知らんが、俺は政略結婚でアイシャにプロポーズをしたつもりはない。愛しているから、心の底から手に入れたいと思ったから、プロポーズをしたんだ!」

 私を愛しているからプロポーズをした? 
 えっ……、意味がわからない。
 私のどこにそんな魅力があるのよ!

「わ、わかったわ! キース様は、私に対する罪悪感からそんな事をおっしゃっているのよ! 確かに、キース様に傷物にされましたし、お嫁に行けないと思い責任を取るおつもりなのね」

 そう考えれば、何の魅力もない自分に、令嬢の憧れの騎士様が婚約を申し込むのも納得できる。責任感が強いキースならあり得る話だ。

「でも、大丈夫です! 結婚するつもりもありませんでしたし、今は傷ひとつないピッカピカの身体をしておりますので!!」

 必死で言葉を紡ぐアイシャに、怖い顔をしたキースがにじり寄る。

(なんで、怖い顔してるのよぉ。私、何も間違ったこと言ってない……)

「アイシャには、俺の気持ちは届かないのか……」

 切なそうに歪められたキースの瞳を見つめ、アイシャの心がジクジクと痛み出す。ただ、その理由がわからない。

「アイシャへの愛は、罪悪感なんかじゃない。俺は、貴方の聡明さと、罪を許す寛大で優しい心に惹かれたんだ。それだけじゃない。自身の意志を貫く強さに、そして間違った事を質す勇敢な心に……、もちろん蜂蜜色の綺麗な髪に、愛らしいコバルトブルーの瞳は、いつまででも見ていたいと思うほど魅力的だ。アイシャを愛しく思う理由なら、いくらでも言える」

 これは、本当に私のことを言っているの?

 キースの過分な褒め言葉にアイシャの顔が真っ赤に染まる。

「アイシャ、お願いだ。俺との結婚を本気で考えて欲しい。俺は、アイシャだから結婚したいと思えたんだ」

 キースに抱きしめられ紡がれた愛の言葉が、アイシャの心に楔を打ち込む。胸の奥底で疼く熱を持て余し、アイシャは、ただただキースの腕の中で震えることしかできなかった。


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