転生アラサー腐女子はモブですから!?
「まぁ、グレイス嬢が本物の白き魔女であろうとなかろうと、ナイトレイ侯爵家はアイシャしか白き魔女とは認めないがな。もちろん、二家がアイシャとの婚約を解消した今、お前とアイシャが婚約し、婚礼の儀を行うのに二家の許可は必要ない。分かっているな、キース」

「えぇ、もちろんです。しかし、もう一人の白き魔女がいる限り、アイシャの安全は脅かされ続ける。いつか、グレイスが、アイシャに仇なす存在となる。そうは思いませんか、父上?」

「つまりは、もう一人の白き魔女を抹殺せねばならぬ時がくるということか」

「はい。そこで、父上に、お願いがあります。ナイトレイ侯爵家直属の諜報部隊を使う許可を頂けないでしょうか?」

「ふむ、暗部か……、その日のために情報を集めるのだな」

「はい。その上で、アイシャにも暗部をつけます。今後、誰がどんな目的で、アイシャに近づくか分かりませんから。ノア王太子に、リアム……、彼らも完全には諦めてはいないでしょう」

「アイシャが本物の白き魔女と知っている二家が、諦めるとも思えんか。しかし、グレイスの問題が解決する頃には、アイシャはナイトレイ侯爵家に嫁入りしている。今が、誰にも邪魔されずアイシャを手に入れるチャンスだと言うことか。彼女に婚約を了承させるために必要であるなら、ナイトレイ侯爵家の諜報部隊を出すのを許可しよう。思う存分やるがよい」

「父上ありがとうございます。必ずやナイトレイ侯爵家への嫁入りを、アイシャに承諾させてみせます」

「うむ。期待しているぞ。リンベル伯爵家の白き魔女をナイトレイ侯爵家へ迎える事は、我が家の悲願だからな」

 キースは、父に背を向け執務室を退室する。廊下を歩きながら、陽だまりのように輝くアイシャの笑顔を想い出す。

(白き魔女など関係ない。アイシャの笑顔を取り戻すためだったら、俺は悪魔にも魂を売る)

 決意も新たに次の指示を出すため、キースはナイトレイ侯爵家直属の諜報部隊へと向かった。

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