転生アラサー腐女子はモブですから!?
「アイシャ様、落ち着いて。今夜はナイトレイ侯爵家のキース様もいらっしゃいます。きっとアイシャ様を守って下さいますから大丈夫です」

 そうだ……、今夜はキースがエスコートをしてくれる。

 先日キースから届けられた手紙と、大量のプレゼントの箱を思い出し、アイシャの心がわずかに軽くなる。

「それに、今夜のために素敵な贈り物もして下さいました。ブルーサファイアのネックレスにイアリングだなんて、キース様のお髪の色と同じですわね。アイシャ様のコバルトブルーの瞳の色とも合いますし、この水色のドレスとも相性がいい。とてもお似合いですよ」

 アマンダが、ブルーサファイアのネックレスとイヤリングを箱から取り出し、付けてくれる。

「きれい……」

「色も形も申し分ありませんわ。流石、国で一、二を争う名家。ナイトレイ侯爵家からの贈り物ですね。まぁ! もう、こんな時間!! もうすぐキース様がお迎えに来ますわ。アイシャ様、エントランスでお出迎え致しませんと」

 夜会へ行くことを最後まで渋っていたアイシャだったが、アマンダに急かされエントランスへと向かう。すると、ちょうどその時、キースが馬車から降り、エントランスホールへと入って来る所だった。

 エントランスに佇むキースは、いつも見る騎士服ではなく、夜会用の燕尾服を着ている。黒の燕尾服は銀糸の刺繍が施され、とても華やかな印象だ。いつもは降ろしている前髪を後ろに流しているせいか、精悍な顔立ちが露わになり、色気がダダ漏れになっている。

(イケメンは何を着ても、様になるのねぇ。カッコイイかも……)

 いつもとは違う色気を放つキースを見て、アイシャの心臓がドキドキと高鳴りだす。熱に浮かされたようにキースを眺めていたアイシャの熱視線に気づいたキースが、わずかに視線を上げる。バチっと合った目に、アイシャの心臓がドキンっと大きく跳ねた。

「やぁ! アイシャ、準備は出来ているみたいだね。俺の贈ったプレゼントも、よく似合っている。とても、綺麗だ、アイシャ」

「あっ、ありがとうございます」

 甘い言葉もサラッと言えてしまうキースの言動に振り回され、アイシャは恥ずかしさで憤死寸前だ。

「お手をどうぞ、お姫さま」

 お姫さまって………、ヤバイ鼻血出そう。

 爽やかな笑顔つきで手を差し出すキースは、前世やっていた乙女ゲームの中のナイトのようにも見える。

(――――うん?? この光景どこかで見たことあるような? まさかね……、引き篭り中にやることがなさ過ぎて、前世の記憶を思い出していた影響かしら)
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