転生アラサー腐女子はモブですから!?
「まぶしい…………」

 閉じた瞼にあたる優しい光を感じ、アイシャは目をゆっくりと開ける。ぼやけた視界が徐々に鮮明となり、明るい方へと視線を動かせば、しっかりと閉じられていたカーテンは開け放たれ、レースのカーテン越しに柔らかな陽の光が部屋へと差し込んでいた。

 辺りを見回せば、昨晩は分からなかった部屋の様子が分かる。

 洒落た小花柄のクリーム色のカーテンは、焦茶色のタッセルでとめられ、精緻な刺繍が施されたレースのカーテンが風で揺れている。ベット脇のテーブルに置かれた大きめのランプも、陶器の傘の部分に色とりどりの花の絵付けが施され目にも鮮やかだ。

 さりげなく置かれたサイドテーブルにしても、座り心地の良さそうなアンティーク調のソファにしても、品の良いものばかりで、この部屋をコーディネートした人のセンスの良さが伺える。

(女性が好みそうな素敵なお部屋ね。それにしても……、誰のお宅なのかしら?)

 そんなことを漠然と考えていたアイシャの耳に扉をノックする音が聴こえ、ゆっくりと扉が開く。

「失礼致します」

 控えめなノックの音と共に現れたのは、メイド服を着た年若い女性だった。入って来たメイドは、アイシャが起きていると気づいていないのか、陶器の水差しとグラスが置かれたお盆を手に持ち、ベット脇のテーブルへと真っ直ぐに向かう。

「あのぉ、すみません……」

 突然、アイシャが声をかけたことで、年若いメイドの肩がビクッと揺れ、固まった。

(あっ! 驚かせてしまったわ)

 ギギギっと音が鳴りそうなほどゆっくりとメイドの顔がこちらへと向き、アイシャとメイドの目が合った途端、彼女の瞳が驚きに見開かれた。

「アイシャ様!! お目覚めになられましたか!? お待ち下さい。直ぐにお呼び致しますから!!!!」

 脱兎の如く退室して行くメイドの背を見送り、アイシャは肝心な事を聞きそびれたことに気づく。

(お呼びするって、誰をよ? 本当、ここ何処??)

 そんなアイシャの心の叫びは、数分後に解決することとなった。
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