転生アラサー腐女子はモブですから!?
「お呼びでしょうか? グレイスお嬢様」

「セス、この男の後始末はお願いね。あと、やって欲しい事があるの」

 執務室の惨劇を見ても眉ひとつ動かさないセスの態度を見て、昂ったグレイスの心が凪いでいく。

 最後に私の味方になってくれるのはセスだけ……

 グレイスはしたためた二通の手紙をセスへと渡す。

「わたくしが指示を出したら、この手紙をアイシャ・リンベル伯爵令嬢とリアム・ウェスト侯爵令息に届けて欲しいの。ふふふっ……、貴方も知っているでしょ。町外れにある隠れ家。愛し合う二人の最期には相応しい場所ではなくって?」

 何もない朽ちかけた屋敷。ヒロインの座を奪ったあの女の最期には、相応しい場所だ。

「……セス、貴方までわたくしを裏切らないでね」

「かしこまりました。グレイスお嬢様」

 グレイスは、(かしず)くセスの手を取り、彼の麗しい手の甲へと口づけを落とした。
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