転生アラサー腐女子はモブですから!?

家族の愛

「アイシャ様! 今日は一日、大忙しですわよぉ~」

 朝早く、専属侍女アマンダに叩き起こされたアイシャは、寝起きの頭でボンヤリと考える。

 今日って……、何かあったかしら??

「もぉ、アイシャ様ったら。そんなポカンとした顔しませんの。もうすぐ次期侯爵夫人となられるお方が、それでは嫁ぎ先で馬鹿にされますわ! 明日は、キース様とアイシャ様の婚約披露パーティーではありませんか。明日に向けて、今日一日かけて、貴方様をピカピカに磨きあげねばなりませんのよ! あぁぁぁ、時間がいくらあっても足りない。さっさと起きて下さいませ!」

 せっかちなアマンダに急かされ、ベッドから起き上がったアイシャは、寝起きで働かない頭を無理やり動かし、立ち上がる。

 すっかり忘れていた……、明日は、婚約披露パーティーじゃないの!

 一週間前にもナイトレイ侯爵家にて最終打ち合わせをしたというのに、アイシャの頭を占めるのは、『リアム』のことばかり。これでは、自分を幸せにすると誓ってくれたキースにも顔向け出来ない。

 未だにアイシャの心は揺れている。婚約披露パーティーが近づけば近づくほど、アイシャの心は揺れ動く。事あるごとに、自分に背を向け去っていったリアムの後ろ姿を思い出し、心が揺れる。

『あの時……、リアムに助けられた時。好きだと言ってくれた彼の手を取っていたら、今でもリアムは自分の隣に居てくれただろうか』と、後悔の念がアイシャの心に押し寄せ、身動きが取れなくなる。

 本当、自分の性格が嫌になる。
 こんなにウジウジとした性格していたかしらね?

 恋を知るまでは、こんなんじゃ無かった。
 自分の趣味に生き、夢を実現するために無我夢中で突き進むことが出来た。

 やっぱり一人で生きていく道を模索した方が良かったのではないかしら?

 結局、私は優しく包んでくれるキースに甘えているだけなのよ。キースを好きかと問われると、たぶん違うのだろう……

 今さら、キースとの婚約をなかった事に出来る訳もなく、そんな事をグルグル考えてしまう毎日に嫌気がさし、婚約披露パーティーが近づけば近づく程、アイシャは現実逃避に走っていた。

 もう逃げられない………
 アイシャ、覚悟を決めなさい!

 アイシャは、憂鬱で動きたくないと訴える身体を無理矢理動かし、侍女アマンダに促されるまま、浴室へと向かった。

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