転生アラサー腐女子はモブですから!?

結末【リアム視点】

「リアム様、悪く思わないでくださいな。貴方が、この世界のヒロインであるわたくしではなく、アイシャなんていうモブですらない女を選んだのが、いけないのです」

 この女はいったい何を言っているのだ?

 ヒロインだとかモブだとか先程から意味不明な事を言っている。

 とうとう追い詰められて、頭までおかしくなったのか?

 予定通り、街外れの廃屋までやって来たリアムは、セスの指示でゴロツキに扮した憲兵に、椅子に後ろ手で縛られ、遅れてやって来たグレイスと対峙していた。

「惨めなものね。あんな手紙に踊らされて、こんな街外れの廃屋まで来るなんて。よっぽど、あのアイシャとかいう女が大切なのねぇ~。あの女にも、手紙を出してあげたわ。リアムの命が惜しかったら、ここまで来るようにってね。さて、貴方の愛するアイシャは、来てくれるかしら?」

 アイシャは、ここには来ない。

 明日、アイシャはキースと婚約する。
 彼女はキースを選んだのだ。そんな幸せ絶頂の彼女が、私を助けに来るはずがない。

――――いや、来て欲しくない。

 グレイスの罪を暴くためには、本人の自供と決定的証拠が必要となる。

『アイシャ・リンベル伯爵令嬢は、愛する者の手で死を迎える。これは避けられぬ運命である』

 この予知を実現させるために、グレイスはアイシャと私を殺そうとする。その瞬間こそ、グレイスの罪を暴く決定的証拠となる。

 グレイスの罪を確固たるものにするには、アイシャがこの場に登場しなければならないと、頭では理解していても、彼女を愛する私の心が叫ぶ。

 危険に(さら)したくないと。

 しかし、一方でアイシャがキースではなく自分を選び、ここへ現れて欲しいと願う、浅ましい気持ちが心の奥底にあるのも事実だった。

 相反する気持ちを抱え、アイシャを想う。

――――彼女はどんな選択をするのだろうかと。

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