a Piece of Cake.
ケーキをおひとつ。

缶ビールの蓋をひく。

夜の公園のベンチに座り、ビールを呷る。
ごく、と喉が鳴った。

柔らかい風が吹いて、葉が揺れる。それがあまりに心地良くて、じわりと目の奥が熱くなった。

すんすんと鼻を啜りながらパンプスを脱ぎ捨てた。

先程いちゃつきながら公園へ雪崩こんだ男女のカップルは、わたしの姿を見て蒼い顔をして走り去って行った。
幽霊にでも見えたのだろう。

「あの」

入り口からすぐこちらへ来たのか、隣に足音が聴こえて顔を上げる。

端正な顔立ち。左目の下に、泣きぼくろ。
身長は高く、肩幅があった。

知らない人だ、と思いながらぼんやりそれを見上げた。

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