1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
「アリアさん、あなたのための書庫を用意したわ」
とある日、義母が案内してくれた。
書庫を使いたいと言ってから2週間ほどが過ぎていた。
もう忘れられていると思ったが、これほど時間がかかったのには別の理由があった。
「さあ、アリアさん。君のために書庫を改造したんだ」
「蔵書も増やしたのよ。お好きな本があればいいのだけれど」
アリアは書庫に入った途端「わあっ」と声を上げた。
綺麗に清掃された書庫には壁際にびっしりと本が並び、カフェテラスが併設してある。
晴れた日にはテラスで紅茶を飲みながら庭で本を読めるということだ。
「君のためのプライベート空間だ」
と義父が言った。
「え……うそ」
とアリアは驚きの声を上げる。
「君の庭園はこの書庫のとなりに造ったんだ。こうすれば自由に書庫と庭を行き来できるだろう」
と義父が言った。
「私たちは使わないから、自由にしてもらって構わないわよ」
と義母が言った。
「あ、ありがとう、ございます」
まさか、何でもしてくれるとは言っていたが、ここまでしてくれるとは。
しかも心配していたふたりの過干渉だが、思っていたより酷くなく、比較的アリアに自由を与えてくれた。
アリアは困った。
これでは、離婚しづらいではないか。
いやむしろ、ずっとここにいたいと思う。