1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

5、これが真実の愛なのだろうか?【フィリクス視点】


 雪山で怪我をしたとき、メアリーが助けてくれた。
 あのときは寒さと恐怖で震えていたからか、メアリーが女神のような存在に思えた。

 彼女が困っているから支援しようと思った。
 彼女に会いにいくたびに、心の中が満たされた。
 彼女の笑顔を見ると、幸福感に包まれた。

 それらがすべて同情だったというのだろうか。
 メアリーに言わせればそうだ。
 だが、それだけではなかったと思っている。

 少なからず、好意はあったはずだ。
 今ではそれが真実の愛だったのかは、わからない。


 フィリクスはしばらく自分のことがよくわからなくなっていた。
 メアリーに恋人がいたという事実は驚くべきものだったが、彼女がそれで幸せなら身を引くべきだと思った。
 それが紳士たるものであり、相手のことを想っての行動だと自負している。

 しかし、ひとつだけわからないことがある。
 メアリーが最後に教えてくれた言葉の意味。


『本気になった相手に別の男がいたとしたら、あなたの胸の中は嫉妬の嵐に違いないわ』


 ケリーという男に対して戸惑いの気持ちはあったが、それ以外の感情はほぼなかった。
 嫉妬とは、一体どういう感情だろう。


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