1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
 アリアの胸中は混乱している。
 
 フィリクスは一体どうしてしまったのだろう。
 彼のこの行動はまるで嫉妬ではないか。

 まさか、そんなはず……。
 彼には愛する人がいるというのに。
 最近の行動と言い、今日の態度と言い、本当に意味がわからない。


 会場を出たあと、ひと気のない場所へ移動した。
 夜の庭園は随所にオレンジのランプが灯され幻想的な雰囲気が漂っている。
 パーティで知り合った若い男女や、夫婦と見られる者たちがゆったりと夜の散歩を楽しんでいる光景が見られる。

 だが、アリアにはそのような余裕はなかった。


「旦那さま、先ほどは一体どうなされたのですか? あんなに取り乱すなんてあなたらしくもない」
「そうか。やはり、僕らしくない態度だったか。実は僕自身もそう思っていたところだ」
「は? はぁ……そうですか」

 何言ってんの? この人、おかしくなっちゃったのかしら?


「僕は本当に、どうかしている。よその男が君と馴れ馴れしくしている姿を見ると、どうにも心がかき乱されて、平静を保てなくなる」

 フィリクスは額に手を当てて、本気で悩んでいる様子だ。
 アリアは首を捻り、ひとつの疑問を口にする。


「旦那さまは私が他の男と仲良く話すのが嫌なんですか? つまり、嫉妬ですか?」

 全力で否定してくるだろうと思ったが、意外な反応をされた。
 フィリクスは顔を真っ赤にして、いや首まで真っ赤に染めて焦り出したのだ。


< 38 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop