1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

「お姉ちゃん、外に出てみたい。いろんなものをこの目で見てみたい」

 ある日、ミラベルは姉にぼそりとそんな思いを打ち明けた。
 しかし、姉も両親と同様、無理だと言うだろう。
 そう諦めていたのに、彼女は意外な返答をした。


「いいわよ。少し出かけてみましょう」
「うそ! いいの?」
「少しだけ、家の近所を散歩して帰るだけよ。実はね、本で読んだの。太陽の光を浴びたほうが元気になるんだって」
「わあっ、嬉しい!」

 姉のアリアも笑顔だった。


 両親はとても神経質で、ミラベルを決して外には出さないようにしていた。
 主治医も両親の顔色を伺い、なるべく彼らの言うとおりに診断した。

 アリアが毎日外出をするのは、王都で有名な医師のところに通っていたのだとか。
 その医師はアリアに医学書を読ませてくれたり、病についての説明をしてくれた。
 アリアは両親に、この医師に診察してもらえばミラベルの病気がよくなると進言した。

 しかし、両親は子供の言うことに聞き耳を持たなかった。
 というよりは、一部上級貴族との利権がらみで別の医師に変えることを両親が渋った。


< 61 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop