カンパニュラ

「聞く?あんたが今の現状を脱却したいなら言うてやるけど?このまま、パパ~ママ~言うて騒ぎながら俺の生徒を続けるなら聞かんでもええ。それも、そのうち分かるっていう道や」
「すごい自信ね」
「あんたのような根拠のない自信とちゃうで。どうする?」

ますます偉そうで腹立たしいほどだけれど、現状は脱却したい。

「聞くわ」
「それがおかしいって気づかんところが、現状を脱却したって底が知れた女やで。つまらん女や」
「そんなひどいこと言われたことないわ」
「言うたことはあってもな」
「…っ…」
「…」
「…教えてください。お願いします」
「まずひとつ目。初めてのことが出来ないのは当たり前でも、出来ないから朱美さんやママがやってくれると考えるのが間違い。今回のことはひとつの例えであって、全ての物事がそうなんや。全部やってもらって当たり前、お膳立てしてもらって当たり前なんは子どもだけ。これはやるけど、これは手伝ってもらえるか?お願いしますっていうコミュニケーションを取らなあかん。社長は電話でも、何度かここに来ても、朱美さん任せでなく洗濯や食事の用意をするように言ってたやろ?社長もすでに問題に気づいて、あんたに接してはったんやな。朱美さんの食事プラス、あんたが湯を沸かしたレトルトの味噌汁でも誉められたやろ?」

それはそうだった…

「まあ俺が聞き取りで感じた限り、奥さんは無意識にあんたの暴力を恐れてはるきらいがある。全然気づいてないみたいやから、深層心理…心の奥深くで働く、自分でも気づかない心の動きのことやけど、それを恐れてあんたに甘いってことはあるな」
「暴力なんて」
「人に物を投げつけるのは立派な暴力や」
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