カンパニュラ

そう言えば、ママは鈴の血を見て吐いたな…

「そこは別の話になるから深く掘り下げるつもりはない。あんたの根本的な問題のひとつ目は、全ての事柄において完成形だけを手にすることや。そこまでの過程に自分も積極的に加われ。このままやと、子どもから老婆やぞ。人の介助を受けているってことや」
「介助なんて嫌だわ」
「嫌だわって気取って言うても、今そうやないかい。今回の引っ越しをきっかけに出来るか?社長も奥さんもあんたを放り出したんとちゃうで。お膳立てはせんと、どこは手伝うか…連絡を待ってはるはずや。お膳立てはせんといてって俺が二人に指導しているからな。まだあの二人も成長中や」

人の介助を受けている子どもか老婆…

「…自分が出来ないことが問題ではない?」
「ないな」
「過程に加わる…文化祭みたいね」
「また幼稚な例えやなぁ…そやけどそういうことや。昨日俺が言うた‘学校生活で人と関わって成長する中で問題なくなるはず’っていうのはそんなことも含めてや。文化祭かて全然人と協力してへんかったんやろ?完成形だけかっさらう…目に見えるようやわ。人にお伺いを立てて、頭を下げてお願いして何事もやり遂げろ」
「ママが今朝言ったの‘人生は‘生活’のためではなく‘生きる’ためにある’って」
「奥さん成長中やからなぁ。自分の人生をちゃんと生きてはるんや。聞いてたら忙しそうやもんな」
「…ここの荷物は自分でまとめます。最後に掃除して…家電品は処分していいものとそうでないものをママたちと相談して…引っ越し業者を頼むほどの荷物でないと思うから、パパか小野田の車をお願いします」
「そうやな。そうやって相談してお願いして完了させたらええ」
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