カンパニュラ

「ほんと、部屋どうしようか…このエリア気に入ったから引っ越そうかな。でも俺のマンションのキッチンが鈴の理想的な形。でもあそこからは小野田の通勤が面倒。沖田に建てたとして…うーん…」
「先週も同じことを話してましたよね。もう決めないとダメですね…私のマンションにもう一部屋あると良かったんですけど」
「でも鈴の理想的なキッチンを使って欲しいとも思うんだよ。毎日のことだからね」
「ありがとうございます、陽翔さん。じゃあ、やっぱり私が陽翔さんのお部屋にお引っ越しします」
「満員電車の乗り換え?」
「そう言われると…」
「沖田に建てる?母さんたちの隣が嫌でなければ」
「それは嫌ではありませんけど、わざわざ建てるっていいのでしょうか?」
「建てるのはいいよ。いま設計から始めて、結婚には間に合わないだろうけれど」

沖田のおうちからここはそう遠くないから、祖父母とも遠く離れない。

「それなら、古いっておっしゃっていた建物をリフォームするだけでも十分じゃないかと思うんですけれど」

沖田の敷地内には小さな真四角の建物がある。以前はそこにお手伝いさんや運転手さんが住まわれていたが、今は運転手さんは通いのお一人、お手伝いさんも通いでお一人と島倉さんが屋敷内の部屋で住み込みなので、あの建物は使われていないと聞いている。

「鈴は中を見ていないよな?見てみる?俺もよくは知らないし」
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