悪魔のホームページ

「橋美さぁん。芸能界辞めるって本当?」

私がそう橋美に聞くと、本人は何も気にしてなさそうに頷いた。

「うん。そうだけど何か?」

この余裕ぶっこいた感じがムカつく。

「なんで辞めちゃうの?もしかして、何か悩みとかある?私先輩なんだし、相談してね」

私がそう言うと、橋美は少しだけ戸惑いながらも口を開いた。

「実は───いや、やっぱ大丈夫です」

結局何も言わずに去っていってしまう。あーあ。もうちょっとで弱みを握れるかと思ったのに。

少し残念な気持ちのまま、私は次の作戦を考え始めた。





「──────は、──────だから」

「お前は─────────から──────の───」

ふと、撮影場所をふらふら歩いていると、橋美ともう1人、誰かわからない男の声が途切れ途切れで聞こえてきた。

もしかしてこれ、アイツの男性関係とか、そういうスキャンダルで使えるんじゃ───

そう思って少し近づいてみると、突然男が私を振り返る。

イケメンだ──────

出てきた感想がそれだった。綺麗な金髪に赤い瞳。優しそうだけど少し怖そうな独特な雰囲気のイケメン。私はその容姿に釘付けになった。

「───俺の仕事の手助けをするのが君だよ。俺に処理させろ。優奈の望み通りの結末にしてあげるから」

男は私に理解できない事を橋美に話すと、私に近づいてくる。

「初めまして岬菜乃さん。突然ですが、菜乃さんは自分の理想の世界はありますか?──────なるほど。自分が1番の世界に行きたいと」

心を見透かされた気分になる。

「もし、一方通行でその世界に行けるとしたら行きたいですか?」

───嘘か本当か分からないその問いに、私は少しふざけ半分で応える。

「行ってみたいわ」

「それでは、あなたの望む世界で──幸せがあらんことを」

突然、目の前が明るくなり、気づけば目の前に誰もいなくなっていた。
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