Beautiful moon

④ 明晰夢(ネモフィラの丘)




…気付くと、濃い霧の中を歩いていた。


右も左も分からず、自分が真っすぐ歩いているのかさえわからない。

まとわりつくような白い霧。

重い水分を含む靄が、行く手を阻む。

その中を必死にもがきながら前に進もうとするも、まるで自分の足ではないように重く、一歩前に進むことさえ、しんどい。



”…ここから早く抜け出したい!!”



そう強く願えば、途端に前方から突風が押し寄せ、周りの霧を一気に取り払っていく。

反射的に瞑ってしまった瞼。

次の瞬間、眩しい光を感じ、閉じていた瞼をゆっくり開ければ…。





そこにはさっきまで包み込まれていた一切の霧が晴れ、雲一つない青空と一面の淡いブルーの花畑。

途切れること無く、見渡す限り蒼い波が果てしなく延々と続き、気持ちのいい風に揺られ、波打っている。


”ここは…この蒼い花は…?”


『この花の名前は、ネモフィラって言うのよ』


真後ろから声が聞こえ、振り返ればいつからそこにいたのか、ほんの10m程先に、ノースリーブの白いワンピースを着た華奢な女性が立っていた。

年齢は自分と同世代か、少し上だろうか。

緩くウエーブのかかった長い髪を、くくりもせず、ただ吹く風に委ねてる。
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