「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「手持ち看板持って結婚相手を募集しろは、俺も酒の勢いの軽い冗談のつもりだったんだけどねー……まさか、こんなことになるとは……まじで、いろいろと責任感じるわ」

 にこにこ機嫌良く微笑む彼と、難しい表情で頭を抱えるルーンさん。そして、今の状況が全く掴(つか)めていない置いてけぼりの私。

「あのっ……? えっと、これって……一体どういうことなんですか?」

 私のもっともな疑問を聞いて、ルーンさんは眉をひそめて彼に呆れたように言った。

「ああ。なんだよ。結婚を約束しておいて、何も彼女には何も説明してないのか。ちゃんと、説明責任は果たせよ」

「ごめん。俺のところまで来てくれて嬉し過ぎたし、もうそれ以上のことが何も考えられなくて。俺はシリル・ロッソ。この前世界を救った、勇者だよ」

 俺は八百屋のトムですのように、さらりと自己紹介された。けど、シリル・ロッソさんが言った内容が信じられなくて、私は口を両手で押さえてしまった。

「え。シリル・ロッソって……けど、勇者さまご一行は魔王を倒した後に、より自分を高めるためと修行の旅に出掛けて……だから、そう。もうこの国には、居ないからって……」
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